―僕らの夏休み(真夏の世の夢)―
…ミ〜ンミンミンミ〜…遠くから、近くからセミの声が聞こえてくる…
ここ暑い夏に、だらけきっている男の子が一人…ぼやいている幼児が一人
それにあきれ返っている女の子が一人…
諸星「…暑い…眠い…死ぬ……
こう暑いとガールハント行く気がしないな…アチい…」
部屋の真ん中にランニングでぶっ倒れて、
扇風機からのぬく〜い風にあたっている高校生…諸星あたる。
そして、それを見ている鬼娘ラム。そしてテン。
ラム「暑さ、寒さも彼岸までって言うっちゃ。」
諸星「…おのれは下らん格言、覚えよって…
彼岸まで、この暑さを耐えろというのか?
だいたいお前らなんか、鬼のパンツ一丁と言うか、
ほとんど裸じゃね〜か?」
そうラムは、いつものトラジマ柄ビキニスタイルである。
テンはオムツ姿と言ってもいいくらいである。
ラム「ダーリンだって、たいして変わらないっちゃ、
それにうちはダーリンが、ガールハントに行かないから、
うれしいっちゃ。
確かにちょっと、家にずっといるのはイヤになるっちゃけど、
お金がないっちゃ」
諸星「…ミもフタもないな…」
テン「な〜ラムちゃん、
あたるのアホ〜は、ほっといて上にあがらへんか?
空を飛んだら、ここより風が涼しいで。」
ラム「風はすずしくても、直射日光で日射病になるかもしれないっちゃ。
うちら鬼族が日射病になったら、地上に戻れなくなるっちゃよ。」
諸星「〜あ〜しかし〜この家から出ただけで、干からびそうだな…」
窓際から外を見ると道路のアスファルトが、
陽炎のように揺らめいている。
…ミ〜ンミンミンミ〜…セミの声だけが、何も変わらない…
諸星「…暑い…」
…それは面堂家からの電話が、諸星家に鳴り響く5分前…
夏休み中、電話での生徒連絡網から、それは始まった。
そう、楽しい一日の始まりのきっかけは、こんなことから始まる。
学校からの連絡に始まり、
順番に電話で各生徒が、次の生徒に内容を伝える。
僕は内容を次の生徒…
アイウエオ順で、次の諸星に伝えるために電話をかけた。
暑くてお金が無くてガールハントに行くことも出来ず、
家でごろごろしていたのだろう。
しばらく待っていると、眠そうな諸星の声が聞こえてきた。
諸星「珍し〜、お前から電話がかかってくるなんて。
暑いからプールに誘ってくれるとか?
嬉し〜終ちゃん、すぐ行くからね〜。」
面堂「ふざけるな。ラムさんならともかく、お前は来なくていい。
電話を入れたのには学校から連絡があったからだ。
今日の夕方4時、浴衣(ゆかた)を着て学校へ集合しろと。」
諸星「学校〜?しかも浴衣着てか〜何で?」
面堂「そこまでの説明は無かった。じゃあな。」
諸星「ちょ〜っと待った〜!!ラム。」
電話の向こうでなにやら相談しているような小声が聞こえる。
しかし、あいにくと僕は耳はいい方だ。
ラムさんが、電話に出る前から話の内容はわかっていた。
ラム「終太郎、お願いがあるっちゃ。実は…」
面堂「面堂家のプールで遊びたいんですね…いいですよ。
(諸星め…ラムさんを使うなど、姑息な手段をとりおって。)
しのぶさんも呼んで一緒に遊びましょう。
…ついでに諸星もいいですよ。悪さをさせないで下さいね。」
電話の向こうで2人喜んでいる声が聞こえてくる。
腹は立つが、夕方まで時間はあるし、
ラムさんだけを誘っても、それを知った諸星が、
どんなことをしても面堂家に侵入してくるのは必至だ。
もちろん撃退する自信はあるが、こんな暑い日に軍を指揮するのも嫌だ。
ラムさんとしのぶさんがいっしょにいれば、
諸星が家に来ても了子やメイドさん達に
ちょっかいをかける確立は低くなる。
しのぶさんには、諸星が連絡を入れることになり、
学校へ行くまで遊んで、学校へは面堂家から直接行くことになった。
ラムさんとしのぶさんと諸星が、ほぼ同時に面堂家についた。
面堂家の巨大な門が開く。
僕は珍しく歩いて、迎えにいってやった。
敷地内ではプールは、大きく分けて家族用と使用人用と数ある。
使用人用保養施設に、招待するわけにもいかないので、
家族用の改装したばかりのプールを使うことにした。
しかし考えてみると、家族以外でクラスメートを呼んで、
家族専用の自分のプールで遊ぶのは初めてだ。
歩道を通り、いくつかの建物を横目に外界
(外の一般住宅)から離れて、敷地内を進む。
諸星「おぉ〜敷地内は、意外と涼しいな〜」
しのぶ「風が、街中とは、違うわね〜」
ラムさんは嬉しそうに空を飛んでいる。今回はジャリテンも一緒だ。
ラムさんの足にくっついている。
呼んでないが、ラムさんの従兄弟だし、まぁいいだろう。
面堂「敷地内には森とか、湖とかあるので、
外とは気温が違って、涼しい風が吹くのだと思いますよ。」
しのぶ「天然の自然の風って気持ちいいわね〜、
一時でも街中の喧騒を離れられて嬉しいわ。」
首筋に流れる髪を、払いのけながら背伸びをするしのぶ。
諸星「オレは、これからしのぶの独特の体形が
見られると思うと気持ちいいし、嬉し…」
最後までセリフを言うことも無く、
しのぶに机ごと、ぶっ飛ばされる諸星。
そして間髪入れられる電撃の嵐。火炎放射。
ラム「独特の体形ってなんだっちゃ〜!!」
しのぶ「独特の体形って何よ!!馬鹿〜!!」
ジャリテン「独特の体形ってなんや〜?!」
それぞれの言葉はよく似ているが、
問いかけている内容がまったく違う。
諸星も馬鹿なヤツだ。
感想をそのまま口に出すなんて。
黒こげになっている諸星なんか放っとこう。
面堂「さぁこちらですよ。改装したばかりのプールなんで、
みんなが一番乗りです。」
しのぶ「わぁ〜広くて、綺麗。」
ラム「町のプールと違いすぎるっちゃ」
広大なプールには人工の砂浜。
人工の小さな波がリズムよく作られ、
片側には2つの3〜4人、
楽に乗れる浮き輪用と一人用の曲がりくねった
かなり長い水の流れる滑り台が交差しながら存在し、
プールの周りには木が生い茂り、
隣には白で統一されたテラスがあって、休めるようになっている。
面堂「ラムさんとしのぶさんのお二人は、こちらで着替えを…」
ラム「実は、もう着替えてるっちゃ」
しのぶ「わたしも、服の下にもう水着を着ているの。」
ジャリテン「わいもや」
諸星「一番乗り〜!!」
大声で叫びながら、
復活した諸星が後ろから走ってきて、服まま飛び込んだ。
プールの水が側にいたみんなに、きらめきながらも散っていく。
ラム「ダーリンずるいっちゃ〜!!」
ジャリテン「わいが一番乗りを狙っとったのに〜あたるのアホ〜!!」
しのぶ「あたる君、服まま飛び込むなんて、ずるいわ。」
諸星「おれをこんな目にあわせたのは、誰だ〜?
せめてこのくらいの権利はあると思うぞ〜」
服まま泳ぎながら、平然と言葉を返す諸星。
面堂「この馬鹿。
独特の体形なんて正直に言うから、そんな目にあったんだろ?
自業自得だ…」
視線を感じる。
言ってしまってから一瞬後悔するが遅かった。
振り返ると眼前に机が迫る。
耳が、空気を切り裂いて机が飛んでくる音をとらえる。
面堂「違います!!
このセリフは諸星への感想であって
しのぶさんへの感想では…」
最後まで言うことが出来なかった…。
強い衝撃と同時に水が口へ、耳へ、鼻へ入り込んでくる。
目を見開くと、細かい空気の泡が体にまとわりつくのが見える。
水の底から見る太陽がまぶしい。
机ごとプールにぶっ飛ばされたのだと、
理解しておぼれそうになりながらも、なんとか水面に上がる。
諸星「あ〜ぁ、しのぶの禁断のセリフを言っちまいやがって、
大丈夫か〜?
しかし隕石の激突みたいで面白かったな〜」
爆笑している諸星。
口や鼻から気管に入った水で咳をしながらでは、文句も言えない。
オールバックも崩れて前髪が目にかかり、前がよく見えない。
しのぶさんがあわてて、
水から上がった自分の背中を軽く叩いてくれた。
しのぶ「ご、ごめんね、面堂君。大丈夫?」
僕はやっと復活して、にこやかに答え、立ち上がる。
面堂「大丈夫ですよ、気にしないで下さい。
僕が気にしているのは…」
同時に夏の光に反射して、きらめく一振りの日本刀。
面堂「あそこで隕石の激突とか言って、
バカ笑いしている男です!!」
危険を感じたのか、あわてて逃げようとする諸星。
面堂「待て〜!!」
もう服を着ていようが、なんだっていい。
プールに飛び込んで追いかける。
ラム「ダーリンも終太郎も、服ぐらい脱いで泳ぐっちゃ!!
もう…しょうがないっちゃねぇ…しのぶ、
うちらはちゃんと服を脱いで泳ぐっちゃ」
しのぶ「そうね。面堂君もあたる君もいいかげんにして、
普通に泳ぎましょ〜」
ジャリテン「あのアホらは、放っといてワイと泳ごう、
しのぶね〜ちゃん」
ラム「そういえばテンちゃん、まだ泳げないからうちら2人、
しのぶと面倒みるっちゃ。」
ラムのセリフで直立不動になるジャリテン。
自分は泳げないという事実を忘れていたらしい。
しのぶ「あら?テンちゃん泳げなかったの?
じゃあ泳げるように練習しましょ」
それからしばらくは、
僕と諸星は服を着たままプール内を泳ぎまくり(?)、
ラムさん達はジャリテンのカメのような、
のろい泳ぎに付き合っていた。
諸星「め、面堂、すこ〜し疲れたから休まんか?
やはり服を着たまま泳ぐと言うのはちょ〜っと無理がありすぎると思うのだが?」
面堂「そ、そ〜だな…やはり服ままというのは、
緊急時か、水難訓練の時ぐらいでいいだろう。」
せめて諸星に一太刀でもと思ってはいた。
が、確かに少し疲れてきたので
水から上がることにした。
面堂「ラムさん、しのぶさん少し水から上がって休みませんか?」
しのぶ「そうね、ちょっと休みましょう。」
ラム「やっと戦い終ったっちゃ?」
ジャリテン「は〜助かった。ほんま危機一髪や。」
何が危機一髪かは知らんが、
ラムさんは何故か変な機械で出来た魚を持っている。
諸星「ま〜な、それより面堂。
なんか飲み物でもないのか?アイスクリームでもいい。」
どこまでもずうずうしいヤツだ。オマケのくせに。
面堂「ちゃんとテラスに準備させている。奥の部屋に冷蔵庫があるから好きに選べ。」
ラムさんたちも歓声を上げる。
面堂「ラムさん用に辛子入りアイスクリームもあるので…」
諸星「うおおおぉぉぉ辛〜い!!!」
忠告を聞く前に食べた諸星が、口を押さえて飛び上がっている。
諸星「水、水くれ〜!!」
面堂「水なら目の前に広がっとるだろう?諸星。」
涙目になって怒っている諸星に、ラムさんがジュースを渡す。
忠告を聞く前に食べた諸星は、やっぱり自業自得だ。
ラム「さ〜テンちゃん。
もうちょっと休んだら、泳げるように特訓を始めるっちゃ」
ジャリテンの目は、ラムさんが手にしている機械の魚を凝視している。
いったい何だろう?
そこへしのぶさんが、代弁するかのようにたずねた。
しのぶ「ね〜ラム?その手に持っている機械の魚は、なんなの?」
ラム「これは前にも使ったことがあるけど、
泳げない人への初心者用水泳上達マシンだっちゃ。
お腹に、くっつけたまま泳いで完泳すると、
外れる仕組みになってるっちゃ。」
諸星「たんなる爆弾じゃないか。
ジャリテンにつけるはずだったのに、手違いでオレにつけやがった。
それはもう使うな。」
服を脱ぎながら嫌そうに答える諸星。
諸星がぶっ飛ぶところなら、
何回でも見たかったが、その手違いとやらで
僕がぶっ飛ばされてはたまらない。
しかし初心者用で爆弾とは…
上級者用のマシンでなら一体どんな恐ろしいことが待ち受けているのか、
考えただけでも恐ろしい。
面堂「今日は夕方までしか時間が無いので、
特訓はまた今度にしたほうがいいでしょう。
それよりまだ流れるプールとか、
波を大きくしてサーフィンをするとかできるので…」
ラム「そうだっちゃね」
しのぶ「とりあえず流れる滑り台をやりたいわ。」
面堂「じゃあ着替えてきます。
サーフィンボードや浮き輪とかの道具はあっちの倉庫に置いてますから。」
諸星「ほんじゃ、出して準備するか」
僕は着がえに、その場を離れた。
グボ…ゲチョ…グボ…ゲチョ…
体に張り付いた服とか、靴の中の水が、音を立てて気持ち悪い。
面堂(…早く着替えよ…)
ジャリテン「あ〜良かった。特訓せんでようなって。
しかし流れる滑り台ってなんやねん。
ところどころチューブになっとるとこあるで?」
諸星「あ…ほんとだ。…とすると、あいつ知らないな。
そういえば改装したばっかりで
今日が、このプール使うの初めてとか言っとったな。」
顔がだんだんニヤついてくるのが、自分でもわかる。
しのぶ「なぁに?どうしたの?」
諸星「いいか、滑り台…スライダーにところどころ、
チューブで全面覆われているところがあるだろ。」
ラム「それがどうしたっちゃ?」
諸星「とりあえず最初は、一人用ですべろ〜ぜ。」
しのぶ「何で?大勢の方が楽しいじゃない。」
諸星「まぁいいから。最初だけな。面白いもんが見られる…いや、聞こえるかも。」
ラム「何だっちゃ?」
諸星「とりあえず黙ってろ。しのぶもいいな。」
滑り台近くにあった倉庫から、3〜4人は楽に乗れる大型の丸型タイプの底のある浮き輪と
一人用の浮き輪を取り出す。
どうも3人は、面堂同様あることに気づいてないらしい。
しのぶ「面堂君戻ってきたわよ」
手を振るしのぶとラム。
面堂「お待たせしました〜」
手を振り返しながら、近付いてくる。
ラム「そんなに待ってないっちゃ。」
ジャリテン「流れる滑り台って面白そうやな〜ワイ初めてや。」
諸星「まぁそれ自体は、確かに面白いがな〜」
面堂「面白いに決まっているじゃないか?僕がいない間、何を話してたんだ?」
諸星「いや…特に…まぁいいじゃないか、早く上に昇ってすべろ〜ぜ」
何か隠している様子に不信を抱いたが、この時点でちゃんと諸星に問いただすべきだった。
あんな醜態を見せるとは…。
諸星「面堂、このスライダー初めてだから、ジャリテンがちょっと怖がっとるんだとさ。
それでな、まず最初お前から滑ってきてほしいんだが…」
面堂「怖い?ちゃんとカーブの部分も計算して体が飛び出して、
いかないように設計しとるはずだが?」
諸星「念には念を。だよ。お前のプールだろ?」
面堂「確かにそうだが…じゃあとりあえず試してみよう。大丈夫と思うんだが…」
諸星「がんばってね〜」
しのぶ「やっぱりやめた方が…」
僕はとりあえず、一人滑り台へ上がり浮き輪を持った。
しのぶ「ねぇ大丈夫なの?面堂君に何をさせようとしてるの?」
諸星「見てれば分かる。怪我とかはしないから、心配せんでいい。」
面堂「じゃあ行くからな〜見てろよ〜」
流れる水の中へ浮き輪を乗せてすぐに飛び乗る。
左右に大きく揺れながら滑り降りていく。
面堂「酔いやすい人は辛い(つらい)かもしれんが、
そんなに長時間でもないしな…
表面もなめらかで、浮き輪の外へ手足を出していても、
怪我をすることは無いだろうし、
カーブの設計も問題無いと思うし…何を怖がっとるんだ?」
しかし次の瞬間、暗闇に包まれてしまった。
そして遠くから近くから、どこからか声がしてくる。
ラム「なんだっちゃ?」
しのぶ「あぁ、あのスライダー!?」
諸星「やっと気づいたか?」
面堂「わ〜ん!!
くらいよ〜!!
せまいよ〜!!
こわいよ〜!!」
スライダーから反響している声が聞こえる。
滑り台はところどころチューブで、全面覆われている箇所がある。
その部分は、全面覆われている為に光がさえぎられ、
トンネルのようになっていて、
暗闇の中を滑り降りてくるようになっていたのだ。
ジャリテン「なさけないやっちゃな〜」
諸星「わぁ〜ははははは!!」
滑り台から出てきた面堂は、浮き輪ごと終点のプールに飛び込んできた。
水しぶきが上がる。
ラム「終太郎、大丈夫だっちゃ?」
面堂「大丈夫です!!!」
自分でも涙目になっているかと思うが、
プールの水でうまくごまかすことができたと思う。
多分…。
思わず諸星をにらむが、諸星は、のほほんとしている。
面堂(こいつ、わかっとったな…)
諸星「よ〜面堂、無事に降りてこられて、
危険はないようだな〜さすが面堂家の安全対策は万全だ。」
水着姿なのに、
自分でもどこから出したのか、さっぱりわからないが、(爆)
とりあえず出してきた日本刀を握り締める。
それを見たしのぶさんが、あわてて自分の考えを述べた。
しのぶ「やっぱり一人じゃなく、大勢で滑り降りた方が楽しいわよ?」
ラムさんも、しのぶさんの考えに同調する。
ラム「そ〜だっちゃっね。みんなで行くっちゃ」
諸星「そう、怒るなよ。今度来る時までにまた、改装しとけばいいじゃん?
チューブ部分を透明にしておくとか?」
こやつは、またここに来て遊ぶつもりらしい。
どこまでずうずうしいヤツなんだ?
そんなに面堂家のプールで遊びたいんなら、
現在建築中だが完成したら、ある別荘のプールに入れてやる。
日本列島ぶち抜きパイプラインで日本海をくみ上げ、
太平洋上を見ながらエンジョイするというプールだが
もっと強力にモーター部分の改造をさせて、
諸星が入ったら大渦、大波、竜巻が襲うように仕掛けをして
敵(かたき)をとってやる。
そう、面堂終太郎の敵は面堂終太郎が討つのだ。
そしてそれから大型浮き輪…底には薄いゴム状の床っぽいものがあり
乗り込める浮き輪…
ほとんど筏(いかだ)だが、それを筏専用の集積機に乗せて
多人数の筏用スライダー乗り場まで運びこんだ。
滑り台頂上に上ると、まず女の子たちを浮き輪に乗せた。
面堂「この部分を手でしっかりとつかんでいてください。」
浮き輪についている、周辺の転落防止の取っ手部分をさし示す。
諸星「まぁ落ちても後から流されていくだけだから、
怪我はせんだろう。準備いいか?」
ラム「OKだっちゃ!」
しのぶ「いいわよ」
ジャリテン「覚悟できとるで」
諸星「行くぞ〜!!」
僕と諸星は、流れる滑り台に浮き輪を押し出しながら、飛び乗った。
浮き輪は流れに乗って水しぶきがあがり、回りながら滑り落ちていく。
ラム「キャ〜!!おもしろいっちゃ〜」
しのぶ「目が回りそう!!」
諸星「わはははは〜」
ジャリテン「おもろいやんけ〜!!」
そう、とっても面白い。
一人で泳ぐよりも、ずっとずっと何倍も。
上を見上げると太陽が見える。
強すぎる日差しは苦手だが、今日は晴れていて良かった。
そんなことを思っていた瞬間、暗闇が僕を襲った。
でもラムさんとしのぶさんがいるから平気だ。
2人のオマケさえいなければ、もっと良かったけど。
そして僕らは、スライダーや波を大きくして、サーフィンをしたりして
夏の日差しを楽しんだ。
後半へつづく