※(字の大きさは「中」が一番良いと思われます。変な所で改行になる方は、表示で変更してください。)
―若社長VSヒラ社員―
-0-
ストーリーがわかりやすいように、ここでは一般的な会社機構を説明します。
必ずしも絶対そうだという事ではありません。わかりにくかったらごめんなさい。
私自身もはっきり理解していることではないので…。それと、この部署にいる人物の紹介をしてますが、
今のところ面堂、諸星、しのぶ、ラム、コースケがメインと考えてます。
諸星とラムの関係もまったく進歩ありません。家から一緒に通勤です(笑)
年齢とかも特に明確にせず、ただドタバタの場所が変わった程度と考えていただければと思います。
社長― 一応会社における責任者です。リーダーです。
この人しだいで会社が繁盛するかどうかおおよそ決まります。この話ではもちろん面堂終太郎が社長です。
秘書課―社長、専務、部長クラスに付く職業です。仕事内容は他の会社社長との面談の予約連絡したり、
社長と社員の間をうまく取り持ったり、他雑用も含めて社長が動きやすいようにさりげなく
フォローをする仕事だと私は思ってます。機転の利く人物として主任秘書しのぶがいて、その下にラムがいます。
営業課―相手がどんなものが欲しいのか、
探りを入れて自分の方はこんな物を持ってるから買わないかと持ちかける仕事です。
諸星あたると白井コースケがこの部署です。
人事課―どういう人がその仕事に向いているか調査して配置します。この話では人事権は全て終太郎が持っています。
広報課―会社がどんなものを扱っているか商品の宣伝や会社のイメージアップを宣伝している部門です。
ここにはメガネがいます。
総務課―事務全体を管理する部門です。事務の全てですから備品の管理さえも含まれます。
備品とは文具用品、ボールペン消しゴムに始まり、各部署で使う伝票、会社用便箋封筒など多岐にわたります。
ここにはチビとカクガリがいます。
庶務課―この部署は私はいまいちどんな仕事をする部署なのか、把握できなかったのですが、
以前チラッと見たTVドラマ、ショムニを参考にして全部署の専門知識外のフォロー部署と考えました。
(悪く言えば雑用…爆)藤波竜之介がいます。
経理課―会社のおこづかい帳係。収入がどれだけあって支出がどれだけあって、儲けがいくらか計算します。
(今のところ該当者なし)
情報企画課―欲しい商品はどんな物か、どんな人物がどれだけ欲しがるのかを調べて商品内容を考えます。
ここにはパーマがいます。
―1―
「給料上げやがれええぇぇ!!このクソダコオォ〜!!」
部屋の向こうから会社中に響き渡る声。
それを聞いて顔を見合わせる男女。
コースケ「ついにやったか、あのアホ。しのぶ、どうして止めなかったんだ?」
しのぶ「止めたら余計にストレスたまるわよ。それにあれくらいどうってことないわ。」
コースケ「まぁレクレーションみたいなものだからな。
しかし面堂の怒りがあたるのアホだけでうまく防げるとは思えん。
とばっちりがこっちにまで来たら困る。しのぶフォロー頼むな」
しのぶ「ちゃんと面堂くんの好きな紅茶、後で持っていってなだめるから大丈夫よ。」
いつもの風景で、珍しくも無いという風に、のんびりと会話をしていた2人は、
この会社に勤める三宅しのぶと白井コースケ。
彼らが話している場所は、一応最上階の社長室前ロビー。
周りの壁や天井がアイボリーカラーを基調とし、大きな花瓶に生花が飾られている広いホールが、
ここが結構な大企業だという事を、うかがい知る事が出来る。
ただ唯一そぐわない風景は、巨大な朱色のタコの像が置かれている事ぐらいだ。
そして社長室の表面に美しい彫刻がほどこされた扉が開き、中から会社中に響く大声でわめいて
文句を言っていた問題の人物があらわれる。
「面堂のバッキャロー、アホ〜、暗所恐怖症の閉所恐怖症!!」
「まだ言うか!貴様〜!!」
部屋の向こうからの悪口の律儀な返事とともに
しのぶ、コースケの2人が見守る眼前を、巨大な釣鐘が扉をぶち壊しながら猛スピードで通り過ぎた。
投げつけられた釣鐘の風圧で、しのぶの髪が巻き上がる。
しかし投げつけられた人物は平然と余裕で釣鐘をよけた為、
釣鐘はタコの像を全壊させ、部屋の前の壁にめり込んだ。
俺の名は諸星あたる。俺は、いや俺たち2年4組のほとんどは今この会社、
面堂財閥系列の1企業に就職した。1企業…、つまりあの暗所恐怖症で閉所恐怖症で、
男女差別が超きびしいアホの面堂が直接会社の経営を行っている物流関係の会社である。
何故面堂の下なんかで働いているのかというと、面堂の方から頼んできたからだ。
当時、俺はラムと一緒にとりあえず大学に行き、しのぶは短大にとそれぞれの道を歩んでいたが
それでも以前と変わらずに4人で遊びに行ってたりしてたので、
あんまり高校の時と変わらなかったが、ある日面堂はこう言った。
終太郎「…今度僕は、力試しに会社を起こしても良いと父上…現面堂家当主からお許しが出た。
諸星、僕の所へ来てその特殊な能力試してみんか?
その人外の物の怪に好かれる性格…僕はプラスになると思ってる…」
そうして俺は面堂の起こした会社に行ってやる事にした。
面堂は同意した他の会社にいた奴らとか、バイト生活を送っていた奴らとか引き抜いて
2年4組の奴らのみならず、
他のクラスの友引高校生徒ほとんどを集めて、一応適材適所と思われる場所に振り分けた。
部署で足りない人材は黒メガネ達で補ったので、
友引高校の奴ら以外はいつもの黒スーツに黒メガネをかけている。
普通の会社風景と比較すれば何だか異様な光景だが、こんなことで動じるのはこの会社では誰一人いない。
ちなみに俺とコースケは同じ営業の部署。しのぶは秘書課の面堂付き主任秘書だ。
俺は最初、面堂に「秘書じゃなく、しのぶは俺と一緒の営業にしろ!」と反対したが、
残念ながら人事権は面堂にあり、今現在も変わらない。ラムも秘書課にいる。
竜ちゃんは庶務課で、いまだにスカート姿というのを見たことがない。
会社では女性は事務制服と決まっていたなら、見れたかもしれないが、この会社は服装は自由なのだ。
メガネはカメラが得意ということで広報担当。
マニアックなCM企画を造っているのでCM業界からは一目を置かれている。
パーマは情報企画部に所属しているが、商品を造る内容などで広報と連動することが多く
メガネと一緒の課だと混同している奴らも多い。
チビとカクガリは同じ総務課だ。伝票内容をめぐってよく顔を会わせる。
まぁ部屋もそれぞれ近い方だ。ほとんど毎日と言っていい。
終太郎「チッ!よけたか、命冥加なヤツ!!※」
穴が開いたドアの向こうから若社長と呼ばれている人物、面堂終太郎が姿を現す。
コースケ「…普通、誰でもよけるぞ。釣鐘が飛んできたら。」
なんだかな〜という風に、眉の間に縦じわを作りかけながら、面堂に答えるコースケ。
しかし俺は反論した。
あたる「社員に、釣鐘をぶつけようとする社長なんて普通いないだろ!!」
終太郎「…社長室へノック無しで、いきなり入ってきて悪口を言いまくり、
あげくに机に足を乗せて社長より偉そうにする社員もな」
冷然と不機嫌そうに言い捨てる若社長。
あたる「このクソダコ、そんなにぶん殴られたいか?」
手にはいつの間にやら、木槌がもたれている。
終太郎「明日の太陽が拝めると思うなよ。」
やはりこちらも、すでに刀が握られている。
つづく。
※いのちみょうが=不思議と命助かる人のことを言います。
会社勤めを経験した人でなければよくわからないと思うストーリーをどうしたらわかりやすいか?
漢字ばっかりで読めない、意味がわからない人とかいたら…と悩みました。でも始まってしまいました。
出来るだけわかりやすいように書く努力をしますので、これからよろしくお願いします。
さて次回、いきなり乱闘か?
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―2―
コースケ、しのぶに目で合図を送る。
しのぶの方も慣れたもので、すでに側には机が山盛りになっている。
しのぶ「2人ともいいかげんにしないと怒るわよ。」
しのぶが本気で怒ると、基本的に女の子にはやさしい若社長とヒラ社員には勝ち目がない。
一応おとなしくなる2人。
しのぶ「それで今回のケンカの原因はなんなの?」
あたる「しのぶ〜聞いてくれよ〜この見積書(※)、面堂が絶対にダメだって。こんな金額認めないって。」
すかさずちゃっかりしのぶに、甘えかかるあたる。
コースケ「どーしてなんだよ?ケチ。」
コースケが若社長、つまり面堂にくってかかる。
終太郎「…文句言う前にお前…諸星の見積書見たのか?」
コースケ「いや、見てねぇ。あたるが怒った顔で部屋を飛び出したのを、
廊下歩いてたらチラッと見えたから追いかけただけ♪」
軽〜く言うコースケに対し、がっくりと少し、ため息をつく終太郎。
終太郎「…僕が拒否するのにはちゃんと理由があるのだ。よく見ろこれを。」
しのぶ、コースケがあたるが作成した見積書を見直す。
終太郎「ここの箇所、0が一個多いんだ。こんな金額で相手が納得すると思うか?」
あたる「あっ…ヤベェ…なら何ですぐ教えてくれないんだよ。やっぱりケチ。」
終太郎「気づいてなかったのか…
いつも教えていたらどうして悪いのかということを理解もせず、
勉強もしないだろうが。
僕の方こそ嫌がらせで訂正もせずに、書類提出しているのかと思った。
部屋に入ってくるなり悪口言いまくって、ドサクサにまぎれて給料上げろとか言うし。
やはり前々から考えていたんだが、お前は研修をもう一度やり直した方がいいかもな。」
…研修…聞こえはいいが、それは面堂の地獄の猛特訓と言ってもいい。
入社する前、面堂は研修を行なった。
それは社会での当たり前の事を覚える為の、仕事をする為の必要な事だったから
自分やコースケ、メガネ達やラムやしのぶも、電話の応対から書類の書き方、果ては株取引の事まで
面堂や黒メガネに教えてもらって、時々、木づちや刀のドタバタ騒ぎをおこしつつ研修を行なった。
女子の方は当然の事ながらお茶付、お菓子付で優しく教えてもらい家に帰る事も出来たが、
男子の方はぶっ続けで泊り込み、脱走しようとすると面堂家私設軍が追いかけてくるという
もう2度とやりたくないキツ〜イ研修だったのだ。
あたる「…研修なんて冗談じゃない…」
しのぶ「これはあたる君のほうが悪いわね。」
コースケ「そーだね。あたるは減俸3ヶ月!」
しのぶとコースケは顔を見合わせて、納得したようにうなづいている。
あたる「勝手に決めるな!!コースケのアホ!!」
終太郎「…僕から見れば2人とも同罪だ。社長の僕にケチなんて。」
眉をよせて少し怒っている若社長。このままではホントに減俸になりかねない。
あたる「(おこづかいピンチなのに、ヤバイ!)ご、ごめんね〜終ちゃん。許して〜。」
途端に卑屈になるあたる。こういう変わり身の速さは天下一品である。
終太郎「まぁいい、ちょうど新商品のことで部屋に呼ぼうかと思ってたから。」
しのぶ「じゃあ、おいしい紅茶でも入れるわね。」
コースケ「俺は下に(営業課)戻ってるから。今日飲みにいくだろ?」
あたる「他のヤツにも集合かけといて。しのぶ、紅茶だけじゃなくってケーキもつけて。」
しのぶ「ちゃっかりしてるわね。」(笑)
終太郎「早く来ないか。しのぶさん、諸星なんかにケーキつける必要ありません。」
あたる「もうすぐ3時なんだから別にいいじゃん。3時のおやつ♪3時のおやつ♪」
小躍りするあたる。
終太郎「やかましい!!」
そしてコースケはエレベーターで下へ、しのぶは紅茶を入れる為に近くの簡易キッチンへ
若社長とヒラ社員は大穴の開いたドアをくぐり、社長室へ入っていった。
つづく。
※見積書=おおよそどのくらいの金額でこの程度のことが出来ますという相手にわかってもらう計算書。
おやつってそういえば昔の時間の呼び方で3時が八つと呼ばれていたから
「おやつ」と呼ばれるようになったそうです。
昔はお昼は食べない、食べれない貧しい人が多く、
お昼を過ぎて小腹がすいた時に夕食前少し食べる習慣がおやつになったと
本で見たことあります。
しかし…近未来不確定話であったとしても…
社会に出ても社長に対しても、名前呼び捨て状態のあたるたち。
いいのか?(爆笑)
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―3―
社長室はかなり広く、足元が少し沈むふかふかした絨毯(じゅうたん)が敷き詰められ、
窓からは明るい光がさしこみ、面堂がいつも使っている大きなマホガニー製の机の前には、
来客用のこれまた大きい机とソファが置かれている。
いつもなら部屋の隅には生い茂った美しい観葉植物が置かれて、
棚の上にはバカラ(※)の美しい花瓶に生花が飾られ
きちんと整理整頓されている綺麗な部屋だが
今は折れた刀とか、壁にめり込んでいる木槌、倒れた観葉植物などが社長室に転がっている。
机の上やソファの上の砕けた木槌の破片を払いながら、来客用のソファに面堂が腰を下ろした。
あたる「そんで話ってなんだ?」
そう言いながら俺もすわる。
終太郎「…なんで社長の僕より偉そうにふんぞり返ってるんだ?足まで組んで?」
あたる「まぁ細かい事は気にするな♪」
面堂は軽くフンッと鼻を鳴らしたが、それから文句を言うこともなく話を始めた。
終太郎「…実はな…諸星…」
何だか真剣そうに話を切り出す。
俺も真剣な顔をする。
あたる「やっぱり給料上げてくれるとか?」
面堂が立ち上がり、ガタンと座っていたソファが後ろに倒れる!!手にはいつもの日本刀!!!
すでに臨戦態勢に入っている!!
あたる「冗談!!冗談だよ!!本気にするなって!!」
終太郎「貴様の言うことは冗談に聞こえん!!」
まさに斬りかかられようとされて第2次バトル開始かと思ったが、そこへしのぶが現れた。
しのぶ「ハ〜イそこまで。面堂君、あたる君の挑発に乗っちゃダメよ。
あたる君もリクエストどおり、ケーキつけたからマジメにね。」
あたる「さすがしのぶ〜、グットタイミングだな♪ケーキなに?」
しのぶ「ジャンボイチゴが入ったロールケーキよ。紅茶は今日はピーチアプリコットティ。
面堂君の好きなフルーツフレーバーティよ。(※)」
あたる「お〜うまそ〜だな♪」
しのぶの後からポットとガラスの小瓶に入った茶葉を持ったラムも入ってくる。
ラム「ダーリンも少しはマジメに終太郎に協力するっちゃ」
あたる「俺はいつもマジメだぞ?」
終太郎「嘘ばっかり。」
あきれ顔で、すかさず面堂がツッコミを入れる。
ケーキ皿も紅茶セットも、面堂の趣味で何かブランド物の白磁のティーセットだ。
会話の間にもしのぶとラムは手際よくお皿を並べて、カップにお茶を注いでいく。
紅茶のいい香りが立ち昇る。
ラム「いいな〜ウチもケーキ食べたいっちゃ。」
しのぶ「ケーキまだあるわよ。秘書室で一緒に食べましょ」
社長室を出ようとするしのぶとラムに対して、面堂が声をかけた。
終太郎「ここでみんなでいっしょに、食べませんか?」
しのぶとラムが、不思議そうに振り返る。
しのぶ「でもあたる君とお話があるんでしょ?」
終太郎「かまいませんよ、後で話の内容の正式通知を、各部署に通達してもらわなければなりませんから。
それに2人が居てくれた方が、諸星も少しはおとなしいだろうし…
ラムさんもオブザーバー(※)として聞いてて下さい。」
そしてラムとしのぶが一緒に3時のおやつをとる準備が終わってから、面堂は話し出した。
つづく。
※オブザーバー―意見は言えるけれど、議決決定権を持たない人。
※フルーツフレーバーティ―果物の香りを紅茶葉につけたものです。
レモンティ、アップルティなどがよく知られています。種類はかなりたくさんあります。
中にはピーチアプリコットのように少し酸味のある紅茶もあります。
※バカラ―ガラス工芸品で有名なメーカーです。
自分設定としてある理由で若はコーヒー飲めません。
飲めることは飲めますが原液(ブラックのこと・笑)の場合少量です。
大抵はミルク、砂糖を加えたカフェ・オ・レです。
ある理由…ここではまだ教えられません。ごめんなさい。
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―4―
4人がそろってから、面堂は話を切り出した。
終太郎「前々からある商品の事を、ある人から聞いて思っていた事なんだが、
それをそろそろ実行に移そうと思う。」
しのぶ「なあに?」
終太郎「ある所からの、ある物の輸入販売…」
そこまで言って、静かに紅茶を飲む面堂。
あたる「何だもったいぶって?ちゃんと言えよ。」
終太郎「…太陽系第8番惑星海王星からのシャーベット輸入販売だ。」
あたる「海王星?お雪さんのところか?」
終太郎「そうだ。」
そして面堂は再び紅茶を口にした。が、その直後、鼻血が吹く様なぶっ飛んだセリフを聞かされる。
終太郎「…海王星女王お雪様とは、実は昔から関係があるのでな…」
この言葉を聞いた瞬間、あたるとしのぶ、そしてラムが立ち上がる。
あたる「なぁにぃ〜面堂!!お前いつの間に〜!!お雪さんは俺がいつかハーレムに…」
あたるは木づちをかまえて、面堂にせまる。
ラム「ダーリン!!まだそんなこといってるっちゃ〜!!」
ラムはあたるに放電現象を起こす。
しのぶ「面堂君のバァァァァカァァァァ〜!!(怒)」
しのぶは若社長が使っている、大きな机を持ち上げる。
その姿はもはや大魔神(爆)
対してあたるが、その姿に応援を送る!!
あたる「しのぶ!やれ!やってしまえ!面堂をつぶせ!!!」
終太郎「誤解です。しのぶさん。違います!!取引先としての関係です!!」
しのぶが持ち上げた巨大な机の影に隠れてしまって腰を抜かしている面堂が、あわてて説明する。
しのぶ「取引先?」
終太郎「そうです、だから落ち着いて机を置いて下さい。説明しますから。」
しのぶがドスンと音を響かせながら机を置き、ラムもソファに座りなおす。
あたる「くそ〜残念だな〜あ〜でもちょっとびっくりした。おどかすなよ。」
終太郎「びっくりしたのは僕の方だ。」
ポケットからハンカチを取り出して、冷汗をふく若社長。
あたる「誤解を生むようなセリフを、いきなり言うからだろ?
しかし何だな。面堂家って地球外の商品なんて扱ってたか?」
しのぶ「私、地球外の商品なんて店頭で見たこと無いわよ?」
終太郎「取引といってもそんな大規模なものじゃないし、商品取引というものでもない。
技術協力だ。ラムさんの仲介でな。」
あたる「ラムの?お前いつそんなことやってたんだよ?」
ラム「高校の時からだっちゃ。ウチら鬼族が地球に来てお雪ちゃんが遊びに来てた頃からだっちゃ」
しのぶ「そんなころから?」
あたる「どうして話さなかったんだよ?秘密にしてくれって面堂に言われてたのか?」
ラム「別にお雪ちゃんからも、終太郎の方からも、秘密にしてくれなんて言われてないっちゃ。
ウチら鬼族は別に商売に興味なかったから。
それにどちらかというと商売熱心だったのはお雪ちゃんのほうだっちゃ」
あたる「なんで?」
終太郎「海王星は同じ太陽系にある地球と交流を持ちたかったんだよ。ずっと以前からね。
でも地球はいまだに統一されていない。多くの国がひしめきあってる。
そんな中ラムさんがいる国、この場合日本だが、それでも一国だけの交流は出来なかったんだ。
正式には今もそうだ。」
あたる「なんで?」
終太郎「一つの国が技術独占をしたら他の国が黙っちゃいない。
それに海王星の技術が流出すれば平和目的外…つまり軍事目的に利用される恐れがあるからだ。」
ラム「お雪ちゃん言ってたっちゃ。
地球とは交流持ちたかったけど、国としては未熟でまだ関わりを持ちたくない。
でも一企業なら、ウチのクラスメートなら良いだろうって。」
あたる「なるほどね…しかしそれなら一企業でも技術独占はマズイだろ?」
俺はロールケーキを口の中に放り込んだ。面堂も紅茶を少し飲みながら答える。
終太郎「だから海王星と共同開発したものは、面堂家からは公開してないんだよ。」
あたる「一体どんなものが今まで共同開発されたんだよ?海王星と地球の科学じゃレベル違うだろ?」
終太郎「確かに失敗もあったが成功もあった。それに科学といっても海王星と地球、
つまり面堂財閥が保有している科学技術と比べてだが、得意分野の違いがあるんだよ。
例えば海王星は、生物バイオ技術とか不得意なんだ。」
あたる「生物バイオ技術?
お前の家また変な物を造りだしたんじゃないだろうな、電気野菜みたいなのとか?」
電気野菜。面堂の庭に10年ほど前から異常増殖した電気を帯びている植物群。
何の為に面堂家がそんな食えないものを作り出したのか、まったくもって今になっても意味不明だが、
そこで昔、子供の頃遭難して今は面堂家お庭番となっている奴とラムをめぐって戦ったことがあるのだ。
そのことは俺以外、面堂、しのぶ、コースケも知っている。
同じ疑問を持っていたのか、しのぶが聞いた。
しのぶ「ねぇ面堂君、電気野菜なんかどうして作ってたの?食べたら感電するのに?」
終太郎「話に聞くと、当時あれはもともと花に対して発光細胞を組み込んでいたんです。
観賞用として暗いところでも自然発光するように。
使っていた細胞は蛍の遺伝子でした。
でも蛍のように弱い光だと植物に遺伝子を組み込んだ場合、
人間の目には見えないわずかな光だったので発光細胞ではなく、発電細胞を組み込んだらしいんです。」
あたる「発電細胞?」
終太郎「全ての生物はわずかながら電気を発している。その中で強い電気を帯びても平気な生物。
つまり電気ウナギとかの発電細胞の遺伝子を植物に組み込んだ…」
しのぶ「それが強すぎて研究放置されて異常増殖してあんなジャングルになったのね。」
俺は「それってホントは研究放置じゃなくて、バイオハザードじゃねえのか?」っと
あいかわらずの面堂家のいいかげんぶりに頭をかかえつつ、ツッコミを入れようとしてやめた。
そんな事をすれば、面堂がまた刀を抜いて話が長くなる。
あたる「それで海王星の生物バイオ技術は、不得意って言う話はどうなったんだ?」
ラム「海王星のバイオ技術が不得意な理由は、太陽に遠くて地球より植物の種類が余りないからだっちゃ。」
あたる「ふ〜ん、なるほど…それで海王星との共同開発で成功した物ってなんだ?」
面堂が眉を寄せて不快感を表す。そして俺の方を見ながら一言告げた。
終太郎「…色々あるが…その中の一つは、お前もよく知っているものだよ。…僕は今でも腹が立つがな。」
つづく。
科学の難しい話だったと思います。ごめんなさい。
発光細胞遺伝子を組み込んだ実験による生物は存在します。
たしか発光するネズミの成功例があったと思います。
発光細胞、発電細胞は正式名ではありません。私の勝手な名前です。
興味ある方はニュートンやネイチャーなどの科学雑誌を見ると良いでしょう。
日本語版も出ているし、面白いですよ。
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―5―
あたる「なんだ?俺が何かしたか?」
終太郎「僕の宝物が水浸しになった。レオパルトなんか戦車の電装品が全部スクラップになった。
…あれは今でも思い出すと腹が立つ。」
薄目で遠くを見て、思い出にひたる面堂。
ラム「ダーリンなんか悪さしたちゃ?」
あたる「なんだよ?俺ほんとになんかしたか?」
終太郎「すっかりさっぱり、記憶の底に穴を掘って隠しているらしいな、思い出させてやろうか?諸星…」
立ち上がりおだやかな笑みを浮かべながら、どこからか木槌を取り出す面堂。
こんなときの面堂の笑いからは目がはずせない。
面堂を知らない人や女の子だったら、ハートに一撃、一目ぼれしそうなくらい、やさしそ〜な笑顔でも、
面堂を知っている男から見れば、危険度120パーセントの危なさ(あぶなさ)大爆発の笑顔なのだ。
背筋に冷や汗が流れる。
あたる「わ〜!!よせよせよせ〜!!そんな非科学的な方法を使わんでも、ちゃんと話せ!!面堂のアホ〜」
しのぶ「面堂君、話してみて、私も聞きたいわ」
しのぶがあわてて、面堂をいさめてくれた。
ラム「ウチも聞きたいっちゃ」
しのぶとラムの説得により、木槌を置いてすわり直す面堂。
逃げ腰になっていた俺もソファにすわり直す。
終太郎「…海王星との共同開発で成功した物の中では、ある特殊な合金とかがあるんです。」
あたる「合金?」
終太郎「いくつかの金属を混ぜ合わせて新しい金属を造ったんだ。海王星と地球の金属を合わせて。
…超合金面堂スペシャルだよ。あの僕の金庫に使ってた…今でも使っているけど…」
あたる「…思い出した!あの巨大金庫。地平線の果てまで見えないような巨大金庫!
俺とお前が閉じ込められたあの金庫!」
終太郎「思い出したか、お前はトラップをことごとく引き当てて、
穴に落ちるわ、手榴弾に吹っ飛ばされるわ、
挙句の果てに水に流され、とばっちりで僕は(※)土左衛門になるとこだった。
全部お前のせいだ。」
話しているうちに怒りがこみ上げてきたのか、面堂の額には怒りマークが浮き出ている。
しのぶ「そんなことがあったの?」
あたる「お前が最初呼び出したんだろうが?
了子ちゃんに会えるか行ってみたら、お前の自慢話につき合わされて、
死にそうになったのはお前のせいだぞ。」
終太郎「いいや、違うね。お前は僕の言うことを信用せず、2回も脱出のチャンスを棒に振った。
1度目はやめろというのに、金庫のドアを蹴飛ばしてドアを閉めるキーワードを叫んだ。
2度目は脱出口はここじゃないと言ったのに、僕の言う事を信用せずに水門を開け、さらに水を呼び込んだ。」
そうだった…まぁ確かに自分が金庫を閉めるキーワードを叫んでしまったのが、全ての始まりではあるのだが、
「夕〜日のバ・カ・ヤ・ロォォォ〜!!」などと
昔の青春ドラマのような恥ずかしい言葉を
キーワードにしている方も悪いと思ってしまう。
あの時、金庫から排水溝の出口付近まで大量の水で流されてきたが、外からの侵入を防ぐために
排水溝を覆っていた網目格子に使われていた超合金面堂スペシャルという金属は、
俺の木槌百連発や、面堂の一撃必殺の刀では破ることは出来なくて、
結局、広大な面堂家では発見されるまで時間がかかり、助け出されたのは3日後だったのだ。
しのぶ「壮絶な話ね。面堂君でも金庫を刀で斬って逃げられなかったの?」
終太郎「それだけ超合金面堂スペシャルの完成度は、高かったんです。…核兵器にも耐えられる金属ですから。
海王星からの要請もあり、使用されているのは面堂家のみで、化学式および金属物質は公開されません。」
ラム「やっぱり悪用される可能性があるからだっちゃ?」
終太郎「…残念ながら…核兵器に耐える戦闘機や戦車が開発されれば世界の軍事バランスが崩れるだけでなく、
テロ活動家にも影響を及ぼすでしょう。」
心底嫌そうに、ため息をつきながら面堂はラムに答えた。
全体のテンションが低くなる。俺はこんな雰囲気は大嫌いだった。
あたる「いるんだよな〜そ〜いうことにすぐ使おうとするせこい奴が〜。」
終太郎「…まぁな、でも核兵器を使われてもお前なら平気だ。」
若社長の言葉にしのぶやラムが笑う。
あたる「俺が平気なら、面堂だって平気だ。俺だけじゃないぞ、ってんだ。フン。」
つづく。
※(どざえもん=水でおぼれた人の総称)
少しシリアスになってしまいましたね…うる星世界観から離れないようにしたつもりですが、どうだったでしょう?
金庫の話はアニメオリジナルでしたね。出演はあたる、終太郎の2人だけ。
鼻血ブーです。妄想大爆発なおいしい話でした。いつか後日談とか書いてみたいなぁと思ってます。
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―6―
しのぶ「でも面堂君、海王星からシャーベットの輸入って簡単っていうか、
それくらい地球でいくらでも生産できるんじゃない?特別おいしいの?」
しのぶが不思議そうに、小首をかしげながら面堂にたずねる。
ラム「シャーベットって終太郎、あの鳥のシャーベットだっちゃ?」
あたる「なんだ?」
ラム「海王星の鳥で口ばし部分がシャーベットなんだけど、
暑いところにいると怒ってシャーベット部分が爆弾に変わるっちゃ。」
事も無げにあっさり言うラムに、俺はコケかける。が、しかし何とか体勢を整えて今度は俺が、面堂にたずねる。
あたる「…お前…そんな危険物、輸入するつもりか?」
しのぶが続く。
しのぶ「それに海王星の金利格差はどうするの?円で支払いなんか出来るの?正式交流ダメなんでしょ?」
俺やしのぶの疑問に対し、面堂が答える。
終太郎「今回の輸入物件は小手調べ的で、原産地宣伝はしません。
それにお金での支払いじゃないんです。
物による交換なんです。
いつになるかはわかりませんが、将来的なシュミレーションとしての他惑星文明との輸入販売なんです。
したがって今回採算などは考えていません。
シャーベットが爆弾に変質するという問題点も
鳥を輸入するのではなく、シャーベットを直接次元トンネルで輸入する方法を考えています。
鳥を暑い地球に連れてくるから、口ばしが爆弾に変質するのですから、それならば鳥本体を輸入しなくても
シャーベット部分のみ輸入すればいいはずです。
面堂財閥からの販売というなら、原産地名を書かなくても販売名のみ明記しておけばいいのですから。」
あたる「そんなもんかな〜」
ラム「物による交換ってなんだっちゃ?」
終太郎「実は輸入だけではなく、輸出も考えているんです。地球面堂家特産品、電気野菜を。」
ラム「電気野菜を輸出するっちゃ!?」
あたる「海王星にか?」
終太郎「以前ラムさんは電気野菜おいしかったって、みんなに話してくれたことありましたよね。
だから考えとしては、地球からは電気野菜を鬼星へ輸出。
その電気野菜の売上代金を地球に送るのではなく、
鬼星は海王星シャーベット購入と次元トンネル使用料にあてて
海王星から代金として商品を地球に送る。」
あたる「なるほど…地球と海王星と鬼星のお金って価値が違うから、商品の内容と量の調整で同じ価値として
それぞれが利益を得るって事か…」
終太郎「そうだ。それに海王星の方からはシャーベットだけ輸入するのではない。
それだけなら夏場だけしか売れないからな。」
あたる「他に何を輸入するんだ?」
終太郎「氷だよ。」
しのぶ「氷?そんなありふれたものを何故?」
あたる「かき氷屋でも始めるのか?」
面堂がキツイ目線を送る。ヤバイ。刀がどこからか出てくる前にあやまろう。
あたる「冗〜談だよ、終ちゃ〜ん♪」
謝った事で面堂がしのぶに…というか、みんなにわかるように説明に戻る。
終太郎「氷というのは意外と需要があるんです。夏でも冬でもオールシーズン需要がね。
それに氷を作る施設や電気代とか考えれば海王星では、ただ同然のものを送るだけですから。
自然に溶ければ水になるし、水なら水で需要がある。
海王星の氷は地球と比べて、透明度が高いんです。つまり不純物がほとんど入っていない。
だから再加工する事も無く、そのまま使うことが出来る。
細かい所では生鮮食品を冷やす事に使われ、大きな所では原子力発電所の冷却にも使われる。
それこそ家庭用から業務用まで幅広く…。
それに次元トンネルの出口を変える事で、
地球の極地の温暖化や、砂漠化した土地に対して緑化対策にも対応できる…。
僕の金庫のトラップに使われていた、大量の水も実は海王星の氷が溶けた水なんです。」
一気に面堂が、しゃべり終わる。
あたる「わかった。その商品に関する交渉を、俺がやればいいんだな。」
終太郎「そのとおり、コースケと一緒にあたってくれ、商品を入れる袋とかのデザイン関係はメガネとパーマに、
ラムさんは鬼星に話を通して、しのぶさんは各部署に通達を。」
しのぶ「わかったわ」
ラム「わかったっちゃ」
みんな立ち上がり、それぞれの部屋に散っていこうとする。
あたる「今日、夕ご飯食べに行こうぜ。コースケがみんなに声かけてるはずだから」
ラム「わ〜みんなでご飯。楽しいっちゃ!」
しのぶ「私も行くわ」
あたる「面堂は?」
終太郎「…行けたらいく。」
あたる「どーせ行くに決まってるくせに〜♪」
そう言ってみんな約束して出て行った。
そのあと部屋を見渡す終太郎。壁に突き刺さった刀、木槌、折れた観葉植物…。
終太郎「…しまった。この部屋、諸星にも掃除させるんだった…」
つづく。
原産地や商品内容の偽証が多く発覚した為に法改定あったと思うんです…
…魚ならどこで取れて、魚の正確な名前を明記すると変わったはずなんですがあんまりよく覚えていません。
話の中では「販売というなら原産地名を書かなくても販売名のみ明記しておけばいい」などと
書いてますが…
地球温暖化に対しては、ホント現実の自分達の力で何とかできればいいのにと思います…。
さて次回はみんなでご飯を食べに行きますが、はたしてどうなるか?
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―7―
営業課にてコースケに社長室での会話を簡単に説明するあたる。
コースケ「なるほどね〜面堂のヤツ、そんな事を考えていたのか…
あいつ一応、社長っぽい事、考えていたんだな。俺はまた、いきあたりばったりかと思ったぜ。(笑)
しかし、まぁなんだ。それは災い転じて福と成すっていうもんだな。
確かに電気野菜なんか発電所の代わりにはなるけど、放っといたらいつまでも増殖して、
そのうち耐電服でも対応できなくなって危ないもんな〜。よくわかったよ。
しかしあたる、忠告するけど仕事と趣味を混同させるなよ。」
あたる「なんだ?仕事と趣味を混同って?」
コースケ「仕事中にガールハントはするなって事。
俺はお雪さんを怒らせて、北海道の雪祭りイベントの氷像ならぬ、海王星の氷の石像にはなりたくないんだよ。」
あたる「何言ってる、お雪さんは優しい人だぞ?」
コースケ「優しいかどうかはともかくとして、
怒ったらさりげなく決定的なダメージを食らわせられるんだよ。
そしてそのダメージを食うのは、お前じゃなく俺のほうだ。お前が原因だったとしても。」
あたる「そんな今から心配しなくても大丈夫だって♪」
コースケは、内心あきらめ半分忠告していた。あたるにガールハントを、やめさせるなんて不可能なことなのだ。
それにモノノケや宇宙人に好かれるタチなので、あたるはどんな相手でも知り合いになれるのだ。
これはものすごい長所だと思う。
面堂だって長所だと感じたから、会社にあたるを誘ったのだ。
トラブルを招くという事もあるかもしれないが、そのことをわかっていてもなお、誘った面堂も
あたるに負けず劣らずスゴイ性格をしていると思う。
こんな面白いやつらがいなければ、一流企業であっても、とっくの昔に辞めていただろう。
あたる「あとでこの話を、メガネとパーマに通しておこうぜ。今日の飲み会あいつら来るだろ?」
コースケ「あぁ、来るって言ってた。俺から言っとくわ。」
あたる「じゃあそっちは任せた。…さてと…もうすぐ終業時間だな。待ち合わせはロビーだろ?そろそろいくか?」
コースケ「そーだな。今日何にする?俺は中華の店に行きたいけど…」
そんな時、机の上の電話が鳴る。
あたる「電話取るなよ、もう終わるのに。」
電話を見るが、それは内線を知らせるランプがついていた。
コースケ「内線だ。取るぞ。」
内線電話を取るがすぐ、あたるに代わるように合図を送る。
あたる「誰からだ?」
コースケ「とにかく代われってさ。」
受話器を渡すコースケ。
あたる「もしもし、諸星ですが…」
終太郎「わかっている。そこに内線をかけたんだからな。」
電話の向こうから聞こえてきたのは、静かな面堂の声。
あたる「面堂?何の用だ?今日行けなくなったのか?」
終太郎「違う。飲み会には行ってやる。別の話だ。」
あたる「なんだ?早く話せよ?もうロビーに行くんだからな。」
何かと思って耳元に強く受話器を押し付ける。
終太郎「そうだろうと思ったから電話した。
諸星、終業時間まであと1分56秒あるから、それまでちゃんと仕事しろ。じゃあな。」
電話の向こうで受話器を置く音が聞こえ、内線が切れて通話音がむなしく続く。
あたるは電話を握り締めたまま、机に倒れこんだ。
それを見たコースケが、ついに来るものがきたと思いこんで、力んで叫ぶ。
コースケ「あたる!!ど〜した?面堂に何を言われた?ついにクビか???」
あたる「……違うけど……なんか……今の会話で……すごく……………………疲れた……」
つづく。
若は几帳面だと思います。たまにそうじゃないときもあるかもしれませんが…
あたるの気持ちを代弁しましょう
「あと1分56秒で、どないせーっちゅうんじゃああああぁぁ!!!!!(爆)」
仕事は最後までしましょう。終業時間前に、終わらせて勝手に帰ってはいけません。(笑)
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―8―
面堂との短い会話で脱力しかかった体から復活し、
会社ロビーへ終業時間を少し過ぎてからコースケとともに降りるあたる。
ロビーにはラムやしのぶ、メガネたちいつもの4人組。竜之介などいつものメンバーが顔をそろえていた。
あたる「ヤッホ〜!竜ちゃ〜ん元気してる〜♪」
エレベーターのドアが開くと同時にあたるが、元気いっぱい竜之介に駆け寄る。
しかし竜之介の見事なコークスクリューパンチによって、
壁際へ螺旋の渦(らせんのうず)を巻きながらぶっ飛ばされていく。
メガネ「アホが、毎度毎度、変わらん行動パターンを繰り広げおって。」
チビ「あ〜ぁ、竜ちゃん今特に、機嫌悪いのに…」
くもの巣状にひびが入った壁の真ん中で、のびているあたるを横目で見ながら、コースケがメガネに問いかける。
コースケ「よっ!みんなそろってるな。竜ちゃんの機嫌悪いって、どうして?」
カクガリ「今日あたる、面堂の部屋で暴れただろ。
折れた観葉植物の取替えとかやってて、諸星が余計な仕事を増やしたからって…」
コースケ「あ〜なるほど、そりゃ怒るわ。」
パーマ「あたると面堂。ケンカの原因、今度はなんだ?」
コースケ「今回はあたるの方が100%悪い。
そんでもって新しいプロジェクトが立ち上がると思うから後で話すよ。
しのぶの方からもそのうち通知が来るから。」
そんな会話の側から早くも復活したあたるが、何事もなかったように竜之介に話しかける。
あたる「竜ちゃ〜ん、痛いよ、そんなにひどく殴らなくても…コブが出来ちゃうじゃん」
竜之介「おめえのどこにコブができるんだよ。仕事を増やしやがって、いそがしいったらありゃしない。」
あたる「ご、ごめんね〜竜ちゃん今度パフェおごるから、許してね。
パフェ食ったあとは、ゲーセン行って…映画に行って…」
ペコペコ謝っていたのに、いつのまにかあたるは、竜之介の太ももに抱きついている。
まるでコアラか抱っこちゃん(※1)のようである。(笑)
そこへ、あたるの目の前に立つ人影が…その姿は仁王立ちになっている。
ラム「…何の話をしてるっちゃ……」
あたる「…すごい…鬼のような形相をした女が目の前に…」
ラム「…ウ・チ・は・初・め・か・ら…鬼だっちゃ〜!!!」
あたるに向けられる電撃リンチ!!他のみんなは、慣れたもので、すでに壁際に逃げてしまっている。
メガネのメガネが、キラリと光る。
メガネ「あのアホが〜ラムさんを怒らせよって。
あとでラムちゃん親衛隊最高幹部会、隊長の名においての裁判で有罪にしてやる。」
パーマ「いつものことだよ、気にすんなってメガネ。」
カクガリ「そうそう気にしない、気にしない。」
チビ「気楽に行こうぜ〜それより面堂は?今日は(※2)花金だろ?ご飯食べに行かないの?」
コースケ「しのぶ?面堂行くって言ったんだろ?」
しのぶ「行けたら行くって。でもちゃんと来ると思うわ。」
コースケ「面堂が来ないとヤバイな〜」
しのぶ「月末だからおこづかいピンチなの?」
そこへやっとラムの電撃から解放され、焦げた(こげた)あたるが会話に加わる。
あたる「俺も面堂が来ないとピンチだな〜」
ラム「終太郎におごってもらうつもりっちゃ?ダーリン?」
焦げたあたるを見ながら、少し楽しげに声をかけるコースケ。
コースケ「お前はいつだってピンチだろ、おこづかいでもそれ以外でも、いつだって。
とりあえず面堂にケータイかけろよ。早く来ないと置いていくぞって。」
つづく。
(※1)抱っこちゃん=昭和に爆発的に流行った商品。腕に巻きつけるソフトビニール製のお人形。
(※2)花金=花の金曜日。土、日曜日休みの週2日制休みの会社での飲み会は金曜日が多いようです。
4人組と竜ちゃんやっと出演出来ました。本来は出させる予定なかったんですけど…。
竜ちゃんのコークスクリューパンチはあいかわらず、さえてます(笑)
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―9―
あたる、ケータイを取り出し面堂に電話する。電撃にあてられて調子が悪いのか、少し雑音が入るが面堂に通じた。
ある意味、あたるなみに根性ある(笑)ケータイだ。
あたる「おい面堂!終業時間は過ぎたぞ。今みんな1階ロビーにいるから早く来い。置いていくぞ。」
わめいているあたるを、少し心配顔で見るコースケ。
ほとんど場合、面堂を説得(?)しておごらせる事が出来るのは、あたるしかいないのだ。
しばらくして、エレベーターが下りてきてドアが開き、面堂がゆるやかに降りてくる。
終太郎「ほう、一応終業時間までは仕事したのか、ほめてやるぞ諸星。」
あたる「なにのんびりしてるんだよ、こっちは準備OKで、みんな待ってるのに!!」
手を振り回してケータイに向かってしゃべる。
面堂のほうは、余裕の笑みを浮かべてゆっくり歩いてくる。
終太郎「わめかずともよく聞こえるぞ。諸星…そんなオーバーリアクションしなくてもな…」
2人の距離はもはや1メートルもない。それでもケータイで会話している。
コースケ「アホか、おまえら…もうその距離でケータイやってる意味ね〜じゃん?」
諸星、面堂ともにコースケを見るが、押し黙ってそれぞれケータイをしまう。
諸星・面堂「…………」
コースケ「小学生か、お前らは…2人ともふくれるなって。俺は事実を述べただけだからな。」
あたる「…そうだな…じゃあ気を取り直して、全員そろったわけだから、居酒屋行こうぜ♪
ずっと前行ったとこ。あそこで俺、好きな料理があるんだよな〜」
コースケ「え〜あんなせまいとこ?それより俺は今日は中華がいい。」
あたる「中華〜?俺は嫌だよ。和風の居酒屋料理がいい。」
コースケ「俺は今日は、中華な気分なんだよ。」
あたる「どんな気分じゃ?」
コースケ「とにかく俺は中華なの。その方が腹いっぱい食べれるから。中華って単品でも量が多いだろ?」
あたる「俺はあの、くるくる回るテーブル嫌いなの。落ち着いて食えん。和風がいい。」
コースケ「中華じゃ。絶対に中華。」
あたる「和風!!」
何だか険悪なムードになっている。周りは別にどっちでも良かったのだが、
あたるとコースケは会社ロビーで大声で、ケンカっぽく騒いで収拾がつかない。
そしてその怒りの矛先は、一番近くで見ていた面堂にまで被害が及びだした。
あたる「な〜面堂、お前、和風がいいよな〜?」
コースケ「いいや、お前中華の方がいいと思うよな〜居酒屋なんて、せまくて嫌だろ?」
自分としてはどちらでも良かったのだが、せまい場所での食事というのは、やはり遠慮したかった。
終太郎「僕は…今回は中…」
最後まで言う前に、諸星に首を絞められる。
あたる「あはははは〜そ〜かあ〜面堂もやっぱり和風がいいよな〜」
コースケ「きたねえぞ、あたる!!違うよな〜面堂、やっぱり中華だよな〜!!」
コースケが、すぐにあたるの手を振り払い、面堂を側に引き寄せる。
あたる「わははははは、手を離せよ、コースケ!面堂が嫌がっとるだろうが!!」
コースケ「お前こそ手を離せよ!」
あたる、コースケともに食い物がからむと異常に熱くなり、止まらない。
そしてあたるがついにキレた!!
面堂をコースケから奪い取るようにして、抱きしめて叫ぶ!!
あたる「面堂はなぁ、面堂は、俺様の
(下僕)じゃあああああああぁぁぁぁ!!!」
コースケもキレた!!負けずに面堂を抱きしめて叫ぶ!!
コースケ「い〜や、面堂はオレの
(金づる)もんじゃあああああああぁぁ!!!」
さわさわ、ざわざわと妙な雰囲気がロビー全体に広がる。
カッコ部分の極めて重要なセリフが抜けているのに2人とも気づかない。
しかしそこへのんびりした、あんまり今の雰囲気をわかっていない、渦中の人物が口を開いた。
終太郎「いつまでやっとるつもりなんだ?ど〜にかしてくれ。」
つづく。
アブナイです。アブナイ雰囲気です。(笑)いろんな意味で。
あたる&コースケの問題発言!!○| ̄|_
故意ではないけどアブナイ2人とわかっていないのが1名。どうなる次回!!(爆)
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―10―
あたる「こ〜なったらアレしかないな。覚悟しろよ。ケガしても知らんからな。」
コースケ「そ〜だな。アレだな。決闘だな。そっちこそ覚悟しろよ。」
2人見詰め合って不敵に笑いあっている。
面堂のほうは何がおかしくて笑っているのか、さっぱりわからない。
ロビー内で決闘なんかしないでほしいな〜と、内心どこか他人事のように思っていた。
終太郎(会社ロビーで、いつのまに決闘するなんていう事になったんだ?
決闘の余波でロビーが壊れると後片付けで、また竜之介さんが怒るな…
でも神聖な決闘に口をはさむ訳にもいかんしな…
しかし…これでもし…多分そんな事はないと思うが、それでも何かの間違いで怪我でもすれば…
労災(※)となるのかな…?一応会社内の事だしな…う〜ん…わからん…………………………
………………………………………………………………………………………ほっとくか。)
この時点で面堂はある方法…自分が知っている唯一の方法での決闘を2人が行うものだと思っていた。
それにこんなに、マジメに2人が争っているのを最近見たことがなく、
本気で戦ったらどちらが勝つのかと思っていたし、
自分に実害がなければ、それでもいいと思っていたので、特に止める気も無かったのである。
あたる「いくぞコースケ!!手加減はしないからな!!」
コースケ「そっちこそ、今のうちに謝れ。泣かすぞ!!」
パーマ「あいつら何やってんだ?」
メガネ「愛と勇気と飯をかけての決闘だろ?あいつら飯を賭けの対象にするとは何事だ。
飯は人類にとって絶対必要かつ神聖なるものなのだ…それをあいつらは…(以下略)」
チビ「別に、今決めなくても時間的に早いから、先にカラオケに行くんだろ?」
カクガリ「俺は、今決めてもいいぜ、腹はいつでもレッツゴーだ。」
ラムやしのぶは無責任に、あたるとコースケを応援している。
竜之介「ま〜とりあえず、がんばれ!」
会社ロビーに集合していた者達一同は、2人いったいどんな技を繰り出すのか、内心ものすごく期待した。
コースケ、あたる同時に叫ぶ!!
あたる・コースケ「いくぞ!!最初はグー、ジャンケンポン!!」
………………………………………………………………………………………………核爆!!!
余りのことに吹っ飛ぶ一同。吹っ飛ぶロビー。期待していた分だけ、失望も大きかった。
メガネ「なんじゃああ、そりゃあああぁぁぁぁぁ!!!!」
パーマ「ふざけんなよおおおぉぉ!!!!!!」
ロビーに失望と怒りの絶叫が響く。
あたる「期待してたのは、お前らの勝手だろうが?」
コースケ「チクチョー負けた。おごらせようとしたのに、俺の金づるが!!」
力んで叫ぶコースケ。それとは対照に勝ち誇るあたる。
あたる「フッ。かるいぜ、この俺様に勝とうなんて10年早い。」
コースケ「今度は勝つぞ、ファイト〜オー!!!」
そこへあきれたように見ていた若社長が会話に参加する。
終太郎「フン。バカバカしい。
リンゴを頭の上に乗せてお互い大砲で撃ち合うのかと思っとったのに、何のことはない。
たかがジャンケンじゃないか?」
あたる「ほ〜、お前ジャンケン知っとったのか?」
終太郎「バカにするな、ジャンケンくらい知ってるぞ。」
あたる「そうか。でもリンゴを乗せて大砲で撃ち合うなんて、そんな決闘考えるのはお前だけじゃ。アホ。
とりあえず、ブイ。やったね。大勝利!!!」
そしてあたるは、高らかにVサインをして勝利宣言をした。
つづく。
↑
今回このイラストはロールオーバー効果仕様になってます。(カーソルを置いたら絵が変わる)
(※)労災=労働者災害補償保険の略。会社で働いている人の病気や怪我に対する保険。
あたるはくじ運とかは悪くてズルするけれど、ジャンケンは何か強そうな気がするんですが…
以前、大金庫で若とやっていた【アッチ向いてホイ】は、あれはどう見ても若の経験不足に見える…。
遊び相手がトンちゃんか、黒メガネだけじゃあね…。
さて次回は居酒屋行く前に、チビが言っていたカラオケへ行くことになります…。
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―11―
あたる「いいな、コースケ居酒屋で。」
コースケ「俺も男だ。真剣勝負に負けた以上、異存はない。」
負けたのはコースケだが、何故か偉そうにふんぞり返っている。
終太郎「真剣勝負ってジャンケンのくせに。」
すかさず面堂がツッコミを入れる。
ラム「ダーリンもう食べにいくっちゃ?」
しのぶ「時間的に少し早くない?」
あたる「とりあえずカラオケにでも行こうぜ。」
そこで一同は先にカラオケをすることとなった。
終太郎(…またか…)
はっきり言って終太郎はカラオケが好きではなかった。あんなに騒がしいところは嫌いだったのである。
それにラムさん、しのぶさん自身の歌を聞くのはいいが、一体誰の歌を歌っているのか、さっぱりわからなかったのである。
もともと終太郎はTVを余り見なかった。
見るのは政治経済番組か、自然動物番組が主で、番組の間でのCMを見ても
わずかなフレーズでは特に興味を持たなかったのである。
だからいつも、歌わずに盛り上げる方を担当していた。
カラオケ屋に集団で入る。
何回か来たことがあるし、来たときはいつも集団なので
店員も慣れたもので、すぐ一番大きな部屋に案内してくれた。それでも10人も入るとちょっと狭いかなという感じだ。
すぐにカラオケのリモコンの取り合いとなり、しのぶは店内電話で飲み物を注文する。
ラムはすでに盛り上げようのアイテムの鈴を鳴らしている。
メガネ「俺は同期の桜だ…(※1)」
パーマ「俺は宇宙戦艦ヤマト!!(※2)」
コースケ「メガネ…毎度の事ながらマニアックすぎるぞ…」
チビ&カクガリ「俺たちはB’zを歌うぜ。」
あたる「B’zっていう顔かよ!」
爆笑する一同。
その笑いの中であたるは、ふと面堂の方を盗み見る。
機嫌が悪かったらおごってもらう確率は低くなってしまうからだ。そして…面堂の方はあまり笑っていなかった。
B’zって誰だ?みたいな顔をしている。が、それでも雰囲気につられているのか、微笑している。
あたる(や〜っと初めて来た時よりかは、なじんだみたいだな…。そうだ!今日は面堂に何か歌わせてみるか。
あいつ歌ったことないもんな〜怒らせてしまうかもしれんが、やってみようか?)
メガネ「貴様と俺とは〜同期の桜 〜(中略) 咲いた花なら散るのは覚悟〜見事散りましょ〜国のため〜」
メガネがしぶい歌を披露する。そんな中、面堂に話しかけるあたる。
あたる「な〜面堂、おまえいつも、盛り上げるだけだろ〜そろそろ何か歌ってみんか?」
終太郎「嫌だ!!」
案の定すぐに即答される。
あたる「歌わんと実力行使に訴えるぞ〜それでもいいのかな〜?」
終太郎「何だ?実力行使って?」
あたる「タコヤキを注文してお前の目の前でみんなで食ってやる。ラムやしのぶ、竜ちゃんもみんな喜んで食うだろうな〜」
面堂は目をつむり、眉を寄せて考え込んでいる。
その間にパーマが歌いだした。
しかもご丁寧に、オープニングのBGMからである。
パーマ「チャ〜チャチャチャチャ〜チャ〜♪チャチャチャチャ〜チャ〜♪
チャララ、チャララ、チャララララ〜♪チャララ、チャララ、チャララララ〜チャ〜♪
さらばぁぁぁ〜地球よぉ旅だ〜つ船はぁ〜
宇宙ううぅ戦艦〜ヤァマァトォ〜
宇宙のかなたぁ、イスカンダルへぇ〜
うんめ〜ぃ背負い、
今〜飛び立つうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜」
チビ「あいかわらずスゲエ音痴だな?」
カクガリ「耳が壊れるぜ!」
あたるはもう一押しすることにした。
あたる「な〜面堂、お前の歌声、聞いたらラムやしのぶはホレなおすぞ〜やってみろよ?」
終太郎「…でも僕は…最近の歌は本当に知らないんだ…歌っている人さえ知らないのに…」
あたる「あのな…メガネなんかど〜なるんだよ?メガネが歌ってた歌なんて、骨董品もいいとこだぞ?」
終太郎「…わかった…とりあえず僕が知っている歌…歌ってやる。」
あたる「お〜やったね♪楽しみだな〜♪」
つづく。
(※1)同期の桜―戦時中の軍歌です。
なぜかメロディ知っている私…そんな世代じゃないのに。カラオケはあるかどうかは不明です…。
(※2)宇宙戦艦ヤマト―ビューティフルドリーマーで友引町脱出時パーマが歌っていた元ネタの歌です。
あの歌をワザとあの音痴さで歌うパーマ役の声優さん、すばらしい演技力だと思います。
初めて見てわかった時には大爆笑。
「さらば〜友引〜旅だ〜つ船は〜♪」映画では、ここまででしたが…。
さすがにこの後「宇宙うううぅぅ戦艦〜ヤ〜マ〜トォォォ〜」とは歌えなかった…。最近はPS2ゲームで復活。
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―12―
面堂がリモコンに手を伸ばし、番号のコード本を見ながら歌の番号を入れていく。
あたる「何歌うんだ?」
終太郎「内緒だ。」
あたる「すぐ順番が来るのに〜う〜ん終ちゃんのイケズ〜♪」
終太郎「気色の悪い声をだすな、おバカ。」
その間にもチビ&カクガリのB’zの歌を身振り手振り歌っていく。
歓声を上げて盛り上げるラムたち。
チビ&カクガリ「〜ミエナイチカラで、だれもが強く繋がっている〜何も大したことじゃないよ、(〜中略〜)
昨日、今日、明日と笑顔のあなたは(〜中略〜)ミエナイチカラよ輝け〜
You've got to be strong (〜中略〜) I never say die ユルギナイチカラよ僕を満たせ〜♪」
竜之介「英語が、ところどころあってよくわかんねぇえけど、一生懸命なのはわかるぞ!!」
メガネ「さっきのパーマの音痴と、どっちもどっちだな。」
パーマ「俺のほうが、かっこいいに決まってるぜ!!」
コースケ「スゴイ自信だなぁ、パーマ!」
一同、好き勝手に感想を述べて笑っている。
チビ&カクガリのB’zの歌が終わった。
礼をして席に着く2人。
次の曲のメロディが流れ出す。
コースケ「このイントロは…演歌か?メガネお前か?」
メガネ「いや違う。誰だ?」
あたる(…演歌〜??まさかこの曲を選曲したのは…)
終太郎「僕だ。」
あまりの事にぶっ飛ぶ一同。
そんな中ステージの方へ歩いてマイクを持ち、歌いだす若社長。
終太郎「〜人生いろいろ〜
男もいろいろ〜♪(by島倉千代子)」
メガネ「あいつなんか悪いもんでも食ったのか?」
チビ「…怖いよう…」
コースケ「あたる…お前、日頃から木槌で面堂ぶん殴りすぎて、その影響でおかしくなったんじゃあ?」
みんな、もし面堂が歌うとしたらJ−POPのような、それこそB’zのような歌でも歌うのかと思っていたのだ。
あたる「人聞きの悪い。それに木槌でぶん殴っていたのは俺だけじゃないぞ?お前らだって殴ってたじゃないか?」
高校の時から今に至るまで、一応勤めている会社の社長に対して、
毎度の事ながら、お互いむちゃくちゃである。(爆)
あたる「とりあえず、面堂が初めてカラオケしたんだ。盛り上げようぜ。イェ〜イ!!」
一同、気を取り直し色とりどりの紙テープを投げたり、
紙ふぶき入りのパーティ用の花火クラッカーを鳴らしたりして、盛り上げた。
あたる「い〜ぞ〜終ちゃん(演歌でも)かっこいいぞ〜ピューピュー。イエ〜イ!!」
つづく。
若同様、私もあまり芸能界を知りません。
それでもB’zの事を知りえたのは
今は閉鎖された某サイト様と友達関係の鈴マークの某サイト様がファンだったからです。(笑)
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―13―
一応みんなが歌い終わった。
時間もかなり経ったので全員カラオケ店から、あたるが決めた和食メインの居酒屋へ向かう。
あたる「あ〜さっきはちょっとびっくりしたけど、まあまあだったな。」
終太郎「まあまあとは何だ?
せっかくめったに聞けない僕の美声を披露してやったのに、その言い草は?」
しのぶ「私は面堂君の歌が聞けて良かったわ。
これから少しずつでいいから、いろんなジャンル聞かせてね。」
コースケ「しかし面堂が演歌なんて意外だったなぁ」
あたる「意外も何も、俺は見当がついてるぜ。どうせ黒メガネの趣味だろう?」
終太郎「…そのとおりだ。子供の頃、子守唄代わりに演歌を歌う黒メガネがいてな、
自然と覚えてしまったのだ。
ひどい時にはマイクと、でかいスピーカーを持ち込んで、
こぶしをきかせながら一晩中歌っていた事もあったな…。」
あたる「子守唄代わりに演歌ねぇ…何かスゴイ感覚の黒メガネだな」
終太郎「注意して止めさせても、数日すると元に戻ってしまうので、
スピーカーに爆弾をセットして爆破したりと実力行使に訴えたが、
終いにはこちらが根負けして、耳栓して寝てた。」
あたる「どっちもどっちだな(笑)」
そんなことを話していると浮いていたラムが地上へ降りる。
ラム「ダーリン確かこの店だったっちゃね。ついたっちゃ。」
いかにも居酒屋!!という雰囲気の赤提灯がつられた、外見的にもそんなに大きくはない店である。
チビ&カクガリ「飯〜飯〜」
パーマ「腹減ったあああぁぁぁ!!」
あたる、ラムの方へ向き直り真剣な面持ちで語る。
あたる「ラム、一言、言っておく。梅酒厳禁。わかったな?
俺はサンマの黒焼きみたいに、なりたくないぞ。」
ラム「わかってるちゃ」
以前ラムは、あれほど梅酒厳禁と注意されていたのにもかかわらず、ついうっかりしのぶの梅酒を
コップを間違えて飲んでしまったのだ。
その結果、後は笑って怒って飛び回って電撃を撒き散らし、
酔っ払いの論理で文句を言ってあたるを黒焦げにしたラムがいた。
そんな居酒屋での前例がある為、神妙な面持ちで答えるラム。
あたる「では皆の衆、……突入じゃあああ!!」
あたる、入り口を開けて入っていき、皆もそれに続く。
やはりカラオケ店と同じように居酒屋の中では大きめの畳の部屋を案内されるが
全員が入ると、とても狭い部屋と化した。
そしてみんな好き勝手に、自分の食べたい物を選ぶ。
若社長も何回かこういう店に足を運んだので、料理を自分で選び、
わからない物は素直にしのぶに聞いて選んでいく。
あたる「さて食い物も飲み物もそろったわけだから…いいな…じゃあ、いただきま〜す!」
一同「いただきま〜す!!」
ちゃんと正座して手を合わせてから一同食べだす。
しかし行儀良くしていたのは最初だけですぐに、ワイワイガヤガヤと騒ぎながらご飯を食べだす。
カクガリ「あ〜一日働いた後のビールはうまい〜!!
五臓六腑(ごぞうろっぷ=身体全体)に染み渡るっていうのはこんなもんだな!」
パーマ「ビールばっかり飲んでると太るぞ〜!!っていうか、すでに太ってるか?」
カクガリ「俺、ちゃんとダイエットしてるぜ〜そう見えないかも知れんけど。」
チビ「ほどほどにね〜」
あたる「ま〜とりあえず、飲めや歌えや。」
何だか漫才のような会話に笑う一同。
メガネ「宴会じゃあああああぁぁぁぁ!!!!」
↑踊るあほう達…(笑)
つづく。まだつづく。もっとつづく。(笑)
三つ子の魂百までも(爆)…私は若を育てたのは、黒メガネたちだと思ってますので…。
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―14―
…居酒屋は戦場と化した。
お皿が次々と積み上げられ、お酒やジュースのコップが空になっていく。
チビ「ああああ〜それ俺の!!頼んだ料理!!」
泣きそうになっているチビ。
あたる「早いもんがちじゃああ!!」
自分が届く範囲以上の周りから、料理を強奪するあたる。
パーマ「こっちだって負けるか〜!!」
怒ったパーマがあたるから料理を取り返す。
コースケ「おしぼり爆弾!!投下!!」
あたるに加勢するコースケ。そばにあったおしぼりをかき集め、投げつける。
あたる「タコヤキ攻撃!!」
注文したタコヤキを皆に投げつけるあたる!!
終太郎「僕の目の前でタコヤキを投げるな!!食うな!!」
激怒した面堂が日本刀をせまい部屋で振り回す。そして乱れ飛ぶタコヤキ!!!
しのぶ「食べ物を粗末にしちゃだめよ!!」
メンバーの良心、しのぶが怒る。
竜之介「しのぶの言うとおりだ!食い物投げるな!投げるくらいなら俺にくれ!!」
要点がズレている竜之介。
そこはもはや、食い物争奪戦バトルロイヤルのようである。
お酒が入っているせいか、かなり理性が吹っ飛んでいる。
メガネやパーマの何人かはネクタイまではずして頭に巻いて、完全宴会モードに入っている。
メガネ「踊るアホぅと見るアホぅ、同じアホなら踊らなきゃソンソン♪(※1)」
パーマ「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ♪」
コースケ「踊る踊るな〜ら♪、ちょいと東京音頭〜ヨイヨイ!!
花の都〜の花の都の真ん中で〜♪(※2)」
カクガリ「野球〜するなら〜こ〜いう具合にしやしゃんせ〜
アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ♪(※3)」
シャツの袖をまくり上げ、おしぼりでほおっかむりして集団で踊るあたるたち。
その目の前で見ているラム、しのぶ、竜之介、終太郎。
竜之介「…アホの集団だな。」
そう言う竜之介も酒が回っているのか、かなり顔が赤くなっている。
ラム「うち時々、恥ずかしくてついていけないっちゃ。」
しのぶ「毎度の事ながら恥ずかしいわね。…ねぇ面堂くん?」
しのぶの言葉を受けて静かに見ていた若社長。
持っていたコップをテーブルに置いておもむろに立ち上がり、片手を挙げて宣言する。
終太郎「…一番!!面堂〜終太郎!!
ロッカーに入ります!!!」
あたる「…このせまい居酒屋のどこにロッカーがあるというのだ?なんて酒に弱いヤツ!!(爆笑)」
つづく。
以前少しだけ説明していた自分設定で若はコーヒーが飲めない理由、それは体質のせい(爆)。
というのは実は、柳のオジジが出てきた話で原作は刀を清めるのは日本酒で、アニメでは梅酒で、ということを
若はやっていましたが、確か少年なんとか法で(正式名わすれました)公的に広く影響があるメディアでは
悪影響を及ぼすと思われる事は変更またはカットされるそうです。TVでは雑誌と違い見る人が不特定に多いという事で
お酒を飲んで刀を清めるシーンが日本酒から梅酒へ変更となりましたが、
私はそんな理由付けは嫌だったので、勝手に若は体質で薬、アルコール類に弱いという理由を設定しました。
健康な人ほど余り薬なんて飲まないですよね。
若はあたる同様ケタ外れに、健康です。超健康優良児です。
そういう人ほど薬とか飲んだ場合効き過ぎるという事があります。
体が薬に慣れていないのです。
だから他にもチェリーの持ってきた妖しげなキノコにクラスで一番最初に芸を始めた理由の定義付けが
正当化できるとも思いました。
そう、若は効き過ぎるのでコーヒーが飲めないのです。飲んだら眠れなくなるのです。
お酒も同様です。強いお酒は飲めません。少量で顔が赤く染まってしまいます。(笑)
(ワインは別かな?本当はビールよりワインの方がアルコール度は高いけど甘口なら飲みすぎてしまうの)
そして私も…コーヒーあまり飲めません(笑)紅茶の方が好きです。
ちなみに「24時間戦えますか〜」というフレーズで有名だったリ○インを(ほんとに24時間起きられるのか?と思って)
飲んでみたら本当に24時間起きてました。
これも普段飲まない人間が、飲んだ結果だと思いました。
飲みなれている人は効き目が薄くなって24時間も本当に起きているとは思えないです。
しかし24時間過ぎた後の体のだるさの不快感といったら…エネルギーを無理やり出して後は空っぽという感じでした。
眠いのに眠れない。元の健康状態に戻るのに24時間以上かかったような気がする。
…しかし今考えるとチェリーキノコ、ヘタしたらあれはマジックマッシュルーム(※)じゃないのか?(爆笑)
(※)マジックマッシュルーム=ヤバイきのこ。合法ドラック?(麻薬に合法も非合法もないと思うが…)
あまり知りません。よい子が手を出すようなものではないです。
(※1)四国の徳島あわおどり。…だったと思う。踊りは大勢のグループで踊り、それは連(れん)と呼ばれます。
全国的に有名なので、よくTV中継で見かける方もいるのではないかと思います。
(※2)東京音頭。実は東京音頭は替え歌で、本家は丸の内音頭という名前。
替え歌の方が有名になってしまったというのをTVで見ました。
花の都、東京の真ん中が丸の内〜♪という歌詞が本当。
(※3)四国の愛媛県(えひめけん)松山で踊られている野球拳音頭。「ヨヨイのヨイ!」の掛け声の後にジャンケンをして
負けたほうは服を脱いでいくという2人一組の対決モードがあります。大勢で踊るパターンもありますが、
確か、発生したのは対決モードが後だったような気がしますが、ちょっとそこは定かじゃありません。
2人対決モードは70年代?にコント55号の萩本欽一氏がお笑い番組で広めたらしいのですが…
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―15―
メガネ「あ〜そろそろ食ったし、飲んだし、帰るとするか。」
パーマ「そ〜だな〜。眠いし。」
あくびをしながら答えるパーマ。全員ぞろぞろと店を出る。
あたると面堂のみレジで話し込んでいる。
肩を軽くたたいてさとすようにして、終太郎の耳元に話しかけるあたる。
あたる「…な〜だからな、面堂お前、社長だろ?
社長なら社員は子供同然だろうが、おごってやるのも親の責任だぞ?
ラムやしのぶに、太っ〜腹なところを見せるチャンスじゃないか?」
えらそ〜な事を言っているが、やっている事は、たかり同然である(爆)。
終太郎「…ん〜そうだな…」
あたる「それじゃ、俺が手伝ってやるよ♪」
半分寝ているような若社長に返事も聞かず、勝手に内ポケットから財布を取り出し、
若社長が持っている無制限の面堂家プラチナカードを、店員に渡すあたる。
この天下無敵のカードがあるからこそ、
食い物を投げようが、部屋を壊そうが何度でも来られるのである。
店員「毎度どうも!!」
カードを受け取り、若社長の内ポケットへ財布といっしょに返すあたる。
あたる「ほら、返すぞ面堂。落とすなよ。」
終太郎「…ん〜」
2人して店を出るとみんなは、3次会に行くかどうか話していた。
コースケ「お前ら、帰り途中まで付き合え。
ラーメンでも食お〜ぜ。明日になったら、すっかりさっぱり忘れるかも知れんけど、
新しいプロジェクトの事まだ、話してなかったし…しのぶ達はどうする?」
しのぶ「付き合いたいけど遅いから帰るわ。
それに竜之介くん酔っちゃって一人じゃ、あぶなくて無理よ。送っていかないと…」
しのぶの背後では、顔を真っ赤にしてカクガリとチビにからみ、
一般的な普通の危ないとはまた違う意味で
華麗なるドロップキックをくらわしている竜之介がいた。
これではしのぶがなだめないと、帰る間、すれ違う知らない人全てに被害が及びそうである。
しかしそれでも、竜之介の今の現状に全く関知せず逆に、
どこかうれしそ〜に、すかさず手を上げる者一名。
言わずと知れた、あたるである。
あたる「は〜い、しのぶ〜♪。大丈夫だから心配すんなって。
竜ちゃんは俺が間違いなく、責任を持って友引高の購買部へ送っていくから…」
コースケ、メガネ、パーマ、カクガリ、チビ。すぐさま、あたるを木槌でぶん殴る。
ラム「よけい、あぶないっちゃ!!」
メガネ「あたるよ…お前にはもっと責任重大な事を命令する。アレを家まで送っていけ。」
アレ…。半分目がすわって足取りが、どこかあぶなっかしい状態の若社長である。
あたる「え〜なんで?」
コースケ「お前、ここの支払いで、面堂のカード勝手に使ったろ?
それくらいやっとかないと、ほんとにクビになるぞ?」
あたる「〜え〜だって〜しのぶ〜ラム〜一緒に帰ろうぜ〜」
まだ、駄々をこねるあたる。
しのぶ「ダメよ、私はラムと竜之介くんを送っていくんだから。」
ラム「ウチもだっちゃ?」
しのぶ「私一人で送るのは、ちょっとね。だから手伝って。」
ラム「わかったっちゃ。しのぶ一人で無理そうだっちゃからね。
ダーリンの方は、あきらめて終太郎を送っていくっちゃ」
コースケ「じゃあ、みんなまたな〜!!」
コースケ達は右に、しのぶたちは左に分かれていった。
夜の巷に(※)あたるが叫ぶ!
あたる「俺一人でど〜しろと言うんじゃ〜!!!」
巷(※)=(ちまた)人が大勢、通る場所。
つづく。まだつづく。まだまだつづく。
勝手にカードを使い込むあたる。それでいいのか若社長?無防備すぎるぞ!(笑)
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―16―
軽くため息をつくあたる。
あたる「しょ〜がないな…お〜い黒メガネ!!近くにいるか〜面堂の護衛の黒メガネ〜!!」
しかしあたるの呼びかけに答えて出てくる黒メガネはいなかった。
あたる(う〜ん、いつもお守りで影ながらくっついているはずのあいつら、
今日は飲み会だから遠慮したみたいだな…困ったな…)
こうなったら本当に、面堂の家まで送っていくしかない。
あたる「ほら、行くぞ面堂。少し歩いて酔いを覚まして、タクシー捕まえられたら、乗せてやるから。」
通沿いをゆっくり歩いていく2人。
繁華街なので、通りはまだ騒がしく、同じように千鳥足ですれ違うサラリーマンも多い。
肩が他の人にぶつかりそうになるのを、避けてヒラ社員は若社長をひっぱり歩いていく。
あたる「あ〜コンビニでも寄ってアイスでも買おうかな…」
独り言のようにつぶやくあたる。それに答えるように話す若社長。
終太郎「…もう歩くの疲れた。」
あたる「…疲れたか?でもそんなにまだ、歩いてないぞ。
とりあえずコンビニのあるところまでガンバレ。」
終太郎「…わかった。僕もアイス食べたい。」
それからしばらく2人は黙ってゆっくり歩いていたが、あたるが面堂に呼びかけた。
あたる「…なぁ、新しいプロジェクトの事、
これからの将来的なシュミレーションって言ってたよな。
…とするといずれは宇宙規模で流通貿易を…そしたらますます面堂財閥は発展していくよな。
面堂〜そんなに儲かっていくんなら給料上げてくれよ。俺は今月金欠なんだ。
まあ自慢じゃないが、今月だけって言うこともないけど…」
そこへあたるの言葉をさえぎる面堂。どこか深刻な表情をしている。
終太郎「…諸星…僕は以前から聞いてみたい事があったんだがな…」
そこまで言って黙ってしまう。
あたる「何だ?改まって?…言ってみろよ?」
しかし面堂は何も答えず、顔をふせてしまった。
何だかただ事ではない雰囲気に、俺は少し心配した。
あたる「…どうした…面堂…なにか、心配事か?言ってみろよ?」
顔をあげる面堂。何だか面堂は真剣な顔をしている。
あたる「ほら、言えよ。どうした?」
そしてやっと面堂は口を開いた。
終太郎「…諸星…台所の流し台の所に熱いお湯を流すと
ベコンって音がするのは、なんでだろう〜な〜?」
予期していなかったセリフに、俺は道端に突っ伏した。
しかしすぐはね起きて、面堂をしめ上げる。
あたる「…お前…寝てるだろ?…起きてるふりしてお前、頭の中、寝てるだろ?」
終太郎「何を言ってる。僕は寝てない、変な言いがかりやめないか。」
あたる「ウソだ、絶対ウソだ。」
終太郎「ウソじゃない。」
あたる「じゃあ、何かまともなことを、ちゃんと話してみろ?」
そして次の瞬間、繁華街に若社長とヒラ社員の絶叫が聞こえた。
終太郎「…お前の母上…でべそ〜!!!」
あたる「寝てるじゃないか〜!!!
面堂のアホ〜!!」
つづく。まだつづく。やっぱりつづく。
あたるは面倒をみると決めたら、意外と世話好きなのではと思うのは私だけかな…。
とりあえず私のイメージとしては、会社では終太郎があたるの世話を、
会社の外ではあたるが終太郎の世話を無意識的にしているという感じなのですが…
しかし…小学生でも言わないような口げんか。2人ともどっちもどっちね…(爆笑)
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―17―
…悪口から発展した日本刀と木槌の、軽めの戦いが過ぎた。
もっと広いところで、そしてアルコールが入っていなければもっと長く戦っていたことだろう。
あたる「…なぁ〜面堂、ちょ〜っと疲れんか?俺はコンビニ行ってアイス食いたいのだが…」
終太郎「いいだろう。…僕も何か冷たい物が食べたい。」
そこで、俺たちは戦いをやめてコンビニへ行った。
面堂の方はアイスだけだったので、レジを通り、
すぐ外にコンビニが用意して置いてあるベンチ(※)へ腰掛けた。
レジのところで、天下御免の面堂家クレジットカードを出していたようで、
店の人に「現金にして下さい」等と言われていたようだったが…。
俺の方は、チョコポッキーやポテトチップス等を色々選んで、最後にアイスを購入して外へ出た。
見ると若社長の方は眠そうな顔で、アイスを食べずに律儀に待っていた。
あたる「お待たせ♪〜何だアイス食ってないのか?先に食べても良かったのに…」
終太郎「こんな人通りの多い、道の側のベンチで食べたくない。土ぼこりがかかりそうでヤダ。」
そんな会話のそばから、コンビニへ入っていく客がいる。俺は面堂に同意した。
あたる「まぁ確かに…こんなところじゃ、ほこってるし、何より人に、ジロジロ見られるような感じがして嫌だな。
向こうに小さな公園があるから、そこへ行くとするか?」
終太郎「公園?」
あたる「ほら、見えるだろ?小さな公園。」
あたるが指差した公園は本当に小さく、公園を通り越して向こう側の道路まで見えてしまう、そんな児童公園だった。
あたる「あそこでもベンチぐらいあるだろ?行くぞ。」
2人並んで、横断歩道を渡って公園へ行く。入り口近くのベンチを見つけて腰掛ける。
あたる「眠気覚ましに、これやるよ。」
のんびりぼけ〜っとアイスクリームを食べている若社長に、コンビニで買ったお菓子箱を破って、一つ差し出すあたる。
終太郎「ガムか?」
あたる「まあ食ってみろ。庶民の味だけどな。」
終太郎「…庶民の味…?」
アイスクリームを食べ終わった後、あたるから平べったい電車の切符のような、
ガムのようなお菓子を受け取り、口の中へ放り込んだ終太郎。
あたるが観察していると若社長は眉がゆっくり寄っていき、顔が苦味虫を潰したような何とも表現しがたい表情となる。
終太郎「…まずい!」
開口一番、文句を言う若社長。
あたる「もっとよく噛んで味を染み出せるんだよ。」
終太郎「なんなんだ…これ?すっぱいし、むにゅむにゅする。」
あたる「むにゅむにゅか、面白い表現だな〜♪」
終太郎「だからなんなんだ?」
あたる「酢昆布(すこんぶ)だよ、こんぶにお酢をひたしたものだ。まぁお菓子というより、健康食に近いかもしれん。」
終太郎「名前、そのまんまじゃないか?芸の無い名前。」
あたる「文句言うな、俺がつけた名前じゃない。」
ふてくされる若社長。
終太郎「GODIBA(ゴディバ)のチョコレートか、クッキーの方が好きだ。買わなかったのか?」
あたる「そんな高級品コンビニにあるわけなかろ〜が。ぜ〜たく言うな。
あっても俺がそんなもん買うわけないだろ?金欠なのに…。とりあえず、このチョコポッキーでがまんしとけ。」
あたるは袋から取り出したチョコの箱を、若社長に放り渡した。
受け取ったポッキーの箱を空けて、中身を取り出し、すぐには食べずにしげしげと眺め、あたるに呼びかける若社長。
終太郎「…なぁ諸星…聞いてみたい事があるのだが…」
あたる「なんだ?」
終太郎「…チョコポッキーのポッキーって…ど〜いう意味なんだろ〜な〜?」
あたる「ぶぷ〜っ?!」
俺は食っていた酢昆布を口から吹き出し、地面に脱力して倒れかけた。いかん。ここで倒れたらもう起き上がる気力がない。
力をふりしぼり、俺は叫んだ。
あたる「…庶民の文化に興味を持つ事はいい事だ、面堂。…だがしかし、今だけは…今だけはああぁぁ…
頼むから黙って
食っていろおおぉぉぉ〜!!!」
つづく。まだつづく。さらにつづく。(笑)
チョコポッキーの名前の由来…
それはテストセールをする時に口で折って“ポッキン”の響きを持つので「ポッキーチョコレート」になったそうです。
でも最初のネーミングは、「チョコテック」…チョコを口に加えてテクテク歩くからだったそうです。
参考はグ○コHPよりでした。
(※)コンビニの店の前にあるベンチ…。
私が住んでいるところは親切にもベンチを用意してくれているところがあったのですが…
やっぱり座りにくいですね…座ってもコンビニへ来るお客と目が合いやすい状態で使うことはあまり無かったですね…。
店主の気配りの違いでしょうか、前の道路に余裕があれば、お花の植木鉢をたくさん置いてあるコンビニもありました。
コンビニ独自に流通させているカードはあるらしいですが、私はコンビニでカードを使って買い物する客は見たことありません。
若は現金買い物でも、たぶん消しゴム一個でも、平気で1万円札を出すというイメージがあるのですが…。
というか、万札しか持ってないような気がする…。しかも束で。
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―18―
若社長がもらったポッキーを、1本ずつ口に運んでいるのを見ながら
コンビニの袋の中を見直すヒラ社員。
あたる「ジュース買うの忘れたな〜。面堂、俺コーラ買ってくるけど、お前もいる?」
終太郎「…お前がおごってくれるなんてな。珍しいこともあるもんだ。」
あたる「誰がおごると言った?」
終太郎「何だ、おごってくれるんじゃなかったのか?」
あたる「俺は金欠だと言ったろう。
…って覚えてないか…とりあえず俺はもう一度コンビニへ行くから、待っとけ。」
お菓子が入っている袋を面堂に預けて、道向こうのコンビニへ横断歩道を渡ってもう一度向かい、
コーラを買って、もと来た道を戻る。
そして…そこで待っていた若社長は腕を組んで少しうつむいて………………寝ていた。(爆)
あたる「起きてるか〜面堂…って、寝とる〜!!!
何でこんなにすぐ寝るんだ、
お前は〜!!」
揺さぶってみるが起きる様子が無い。
あたる「こら〜面堂!
こんなところで寝とったら、
誰かに棒でつつかれるぞ!
落書きされるぞ!こら〜!!」
しかし反応がない。あの他人の気配に敏感な面堂が完全に眠ってしまっている。
あたる(なんでこの俺が面堂のお守りをしなくちゃならないんだ…?
なんかバカらしくなってきたな…決〜めた♪。)
もう一度コンビニへ向かい、店員にあるものをもらえるように頼む。
それはありふれた物だったし、業者が引き取りに来て捨てるものだったので、
簡単にもらえる事が出来た。
それを持って公園で組み立て、張り紙を付ける。
あたる「ふっふっふっ…ふぁわ〜はっはっはっ〜われながらうまくできたものよな〜」(笑)
まるっきりその笑いは、[お代官様のお好きな、山吹色の菓子でございます〜]と
いうような悪代官と悪の商人越後屋との会話での笑い方だった。
悪事を働く時の笑いは、古今東西みな同じのようである。(爆)
そして組み上げて出来上がった物は、大きめのダンボールの箱。
コンビニは業者と箱単位で商品を取り扱うので、ダンボールがあるときは結構たくさんあるのだ。
ダンボール箱を公園前の道端へ置いて中に、眠っている面堂を入れる。
あたる「うん、ダンボールって説得力あるよな〜やっぱり。」
箱の表面には紙を張って大きな字でこう書かれていた。
【お願い。誰かもらって下さい、名前は終ちゃんです!!】
あたる「これで準備完了。よし。」
コンビニの袋を持って自分の上着を肩にかけ、手を振る。
あたる「バイバ〜イ。誰かにうまく拾ってもらえ〜後は、まかせた。
俺は眠い。たっしゃでな〜♪」
つづく。
…寝る子は育つ。(笑)
こともあろうに、自分の勤めている会社の若社長を
「眠いから」という理由で道端に捨てて帰るヒラ社員(爆笑)
ついにあたるが若を見捨てた…?誰かに拾われるのか?若社長の運命は?どうなる次回?(爆)
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―19―
しばらく歩いてふと別のコンビニへ入り、立ち読みをするヒラ社員。
窓の外を見ると何だか雲行きが怪しくなってきている。
あたる「…やべ…なんか雨降ってきそう…いいかげん時間も遅いし、そろそろ帰ろうかな…」
今度は何も買わず、外へ出て空を見上げる。
あたる「…本当に誰かに、拾われても困るよな…やっぱり…」
新聞やニュースで【面堂家次期当主ダンボール内で発見!】とか【誘拐か?面堂家次期当主行方不明!】とか
見出しが踊っているのを想像する。
別に面堂がダンボールでこのまま発見されようが、誘拐されようがどーでもよかったが、問題なのはその後。
異次元に飛ばされても、必ず自力で戻ってきて報復しようとするようなヤツなのだ。
ダンボールに捨ててきたのが自分と分かれば、報復攻撃として家ごと爆弾で吹っ飛ばされるかもしれない。
あたる「…しょうがない…つれて帰るか…」
足を先ほどの公園に向ける。しばらく歩いて元の道を戻り、捨ててきたダンボール箱へ近付く。
置いてきた位置は、少しも変わっていない。
あたる「…いるか?面堂?」
ダンボール箱を、のぞきこむあたる。
一応の心配をよそに、若社長は静かな寝息をたてていた。
あたる「…このタコ、まだ寝てるのか?」
ほっぺたをつつくあたる。
あたる(本当に落書きしてやろうか、こいつ)
以前、会社でいい気持ちで寝ている時、顔に落書きされたことを思い出す。
しかし雲行きも怪しく、ここでそんなことをしている暇もなさそうだ。
ダンボールを分解し、公園のゴミ箱に捨てて、若社長を背中に背負う事にする。
あたる(くそ〜重い、誰だ?面堂に酒、飲ませたヤツは?)
歩きながら考え、そういえば自分も面堂におごらせる為に、酒を勧めて(すすめて)いた事を思い出す。
しかも隙を見て面堂のグラスには、自分だけでなく他の悪友が日本酒、ビール、その他いろいろとごちゃまぜに(※)
入れていた事も思い出す。
あたる(こんなことなら、飲ませるのは少しにしとけば良かった。)
歩きながら少しずり落ちそうになる若社長の身体を、持ち上げるヒラ社員。
あたる「…しょうがないな…あ〜もうほんとに、世話の焼ける…やっぱり捨ててくればよかったかな〜」
つづく。
まだつづく。(爆)
(※)ごちゃ混ぜ状態の酒をちゃんぽんと言うそうです。
急性アルコール中毒で死亡事故などと、年末年始、学生の入学、就職祝いという時期によくニュースとして聞かれます。
二十歳以上の皆様は本当に注意しましょう。軽い気持ちでいるうちに、加害者になったり、被害者になったりするんです。
顔に出ていないからと言って無理に飲ませたりしていると、犯罪として立件される可能性だって出てくるんです。
「えらそ〜な事を言ってるな」とお思いになるでしょうが、お酒は、ほどほどにしましょう。(笑)
それにしても………ヒラ社員は若社長をどこへ持っていこうするのか?やっぱり捨てるのか?次回どうなる?
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―20―
…うっすらと目を開けた。何だか天井が低いような気がする。
部屋がせまいような気がする。何故と考える気も起こらない…
ぼんやりとした頭でそれだけ考えて、また無意識に目が閉じた。
テン「オマエ、人の家でいつまで寝とんのじゃ?」
(上の方から誰かの声がする。誰だろう?)
テン「こら〜おんどれ、ワイがやさしゅう起こしとる間に起きんと黒こげにしたるぞ?」
(黒メガネに関西弁を使うヤツなんていたかな……なんで真上の方から声がするんだ……)
…誰かが側に、近づいてくる気配がする…
あたる「なんだ?まだ起きないのか?」
テン「あかん。さっき少し、目〜開けたけどまた寝てしもた。こ〜なったら丸こげにして…」
あたる「アホ、ふとんまで燃やすつもりか?」
(うるさいな…何を丸こげにするんだ…さっきから一体なんだ?…)
テン「こないだ、お前の母ちゃんがお前にしたように、チェリーのアップでも
見せたらどやねん?一発で目が覚めるでぇ」
あたる「アレか…母さん朝っぱらから最凶な起こし方してくれたよな…
唐突に見せられて、心構えがなかった俺は、三途の川を渡りかけたよ…」
くすくす笑うテン。
テン「えぇ目覚ましやんけ。毎日毎日、朝寝坊するお前の自業自得やねん。」
あたる「言うな!!」
(…あぁ…もぅ…うるさい…)目を開ける。
視界に、なにか丸いものが見える。何か浮いてるようだ。視界の横から何か…顔?が見える。
テン「…あっ、目が開いたで。」
あたる「やっと起きたか?
てっ…痛てえええぇぇぇ!!!
なにすんじゃあああああぁぁぁぁ〜!!!」
終太郎「……ヘンな顔……」
やっと目が開いた若社長は、手を伸ばしてヒラ社員のほっぺたを、おもいっきりビョ〜ンとひっぱっていた。
振り切って左右のほっぺたを押さえるあたる。
あたる「何さらす〜!!お前寝てるだろ?まだ頭の中、寝てるだろ〜?さっさと起きんか、このボケ!!」
テン「アハハハハハ〜ヘンな顔!!」
空中で笑い転げるジャリテン。
あたる「うるさいぞ、ジャリテン!!」
終太郎「…なんでお前がここにいるのだ?」
あたる「…あのな…」
終太郎「…ここどこだ?」
あたる「俺の家の俺の部屋の隣の部屋だ。」
終太郎「???」
階段を上る軽い音がして部屋のドアが開き、もう一人の人物が顔を出す。
あたるの母親「…あたる?面堂君、起きたの?」
そこで初めてはっきりと目が覚める。
終太郎「諸星のお母様!!」
あわてて跳ね起きる。
あたるの母親「あぁ起きたのね、面堂君おはよう。」
終太郎「…おはようございます。…あの…僕は昨日…」
あたるの母親「あたるが連れて帰ってきたのよ。」
あたる「お前寝てたからさ〜帰り道途中でタクシー拾ってさ〜いざ、お前の家に送ろうかと思ってたんだけど考えたら
送った後、家に帰り着いた時に俺が、タクシー代払わないといけないしさ〜それなら俺の家の方が近いし…」
テン「昨日ちょっとした騒ぎだったんやでぇ、
お前タクシーから降りる時に、何を思ったんか知らんけどいきなり、あたるに釣鐘ぶつけようとしてなぁ…」
あたるの母親「あたるがよけたものだから、釣鐘がタクシーをつぶしちゃってね。運転手さん呆然としていたわ。」
終太郎「…そ…そんなことが…す、すみません…」
赤面してそれ以上、言葉が出てこない。
あたる「ここまでのタクシー代とタクシー丸ごとの代金は、お前の財布から勝手に払ったからな。」
あたるの母親「さ、朝ごはん出来たから、みんなで食べましょう。面堂君も支度していらっしゃい。」
終太郎「…重ね重ね、すみません…」
あたるの母親「気にしなくていいのよ、息子が1人増えたみたいぐらいだわ」
そう言ってジャリテンと一緒に部屋を出て、階段下へ降りていく。
それと同時に布団に突っ伏してしまう若社長。
あたる「どうした?」
しかし問いかけに答えない。
あたる「一体どーしたんだよ?」
指で若社長の頭をつつく。
やっと顔をあげるが若社長の顔は、何だか泣きそうな顔になっている。
終太郎「…こんな失態見せるなんて…最低だ…」
あたる「いつものことじゃん、いまさら気にすんなって♪」
終太郎「何をいうか〜!!貴様〜!!」
またドタバタいつもの2人のケンカが始まる。が、しかし階下からの怒る声が響いて、騒動はピタリと治まる。
あたるの母親「2人とも早く来なさ〜い!!」
つづく。
あたる母親最強〜!!あの包容力好きです。優しくて強くてほどほどに?欲があって生活感を感じます。
…本当はこの20節目はなかったハズなんですが…。
最初の構成ではあたるの家に終太郎を泊まらせる予定も、あたる母親も出演まったく予定無しだったんです。
さて…次回は…みんなで朝ごはん!!やっと最終回を迎えます。
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―21―
2人急いで階下におりて、あたるはそのまま部屋に入り、
終太郎は洗面台で身支度をしてから部屋に入る。
TVやちゃぶ台が置かれた部屋は、ご飯や味噌汁、お茶などから出来たての湯気が立ち昇っている。
鍋を持って空中に浮かんでいたラムが声をかける。
ラム「終太郎、起きたっちゃ?オハヨー。」
終太郎「おはよう、ラムさん。」
新聞を読んでいた諸星の父親が顔を上げる。
諸星父親「おはよう面堂君、よく眠れたかね?」
終太郎「…はい…お世話になりました。…申し訳ありません。」
諸星父親「なぁに、こっちもあたるのことで世話になってるから、お互い様さ。
それに顔見知りやそれ以外の者がたずねてくるのは、
この家では珍しい事ではないからね。ほら。」
指差す方向を見ると机の向こうにコタツが置かれて、コタツネコが手を振っている。
そしてちゃっかり、さも当然と言う風にチェリーまでもが座っている。
諸星母親「さぁ面堂君はここに座ってね。準備が出来たから、みんなちゃんと座りなさい。」
お茶碗と箸を置いていた諸星の母親が夫の隣に座り、みんな所定の位置に座る。
諸星母親「じゃ、おあがりなさい。でもあたるたちは昨日飲んで来たんだから、
始めはおかゆにしておきなさい。」
手を合わせる一同「いただきま〜す!」
ちゃぶ台の真ん中に、大きななべが置かれている。
あたる「おかゆじゃなくって、おじやにしてくれれば、よかったのにな〜♪」
終太郎「おじや?」
あたる「おじやっていうのはな…ゆがいて細かく刻んだ野菜とか肉とか、
卵を混ぜたグレードアップ版おかゆ事だ。」
面堂は黙って聞いていた。知っていると言わなかったので、
どうやらおかゆはともかくとして、おじやの事は知らなかったらしい。
あたる「どうする?卵…入れるか?」
終太郎「…入れる。」
面堂が承諾したので卵を入れてかき混ぜた。
あたる「これで醤油をたらすとうまいんだよな〜卵ご飯、お前食ったこと無いだろ?」
終太郎「また庶民の味か?」
昨日の酢昆布の事を思い出したらしい。
あたる「これは、ほんとに美味いんだって。」
ラム「ダーリンの言うこと信じちゃいけないっちゃ。
終太郎、これはおもいっきり7味唐辛子とコショウとワサビと醤油とラー油を
入れないとおいしくないっちゃ」
あたる「お前は黙っとれえええぇぇ!!」
終太郎「と…とりあえず、辛子とコショウとワサビとラー油抜きでもらう事にする」
諸星の母親がお茶碗に山盛りに入れてくれる。
諸星母親「お米だけはいっぱいあるから、食べてね」
それからゆっくりした休日の雰囲気の中でご飯を食べた後、
若社長は黒メガネを呼んで自宅へと帰っていった。
そして週明け…。
いつものように、ラムとヒラ社員はいっしょに会社に行った。
いつものように、会社の前でしのぶやコースケたちと出会う。
あたる「しのぶ〜おはよ〜♪」
すぐさま駆け寄り、
しのぶに抱きつこうとしてぶっ飛ばされるあたる。
あたる「ブルーインパルス〜!!!」
青空に白いシュプ〜ルが描かれる。
ラム「ダーリンそのまま、逃亡して会社さぼったら電撃リンチだっちゃ〜!」
コースケ「逃げるだろうなぁ〜あたる…出勤は早くて昼過ぎ…重役出勤だな、ありゃ。」
しのぶ「だめよ〜あたるくん、面堂君に給料カットされちゃうわよ〜」
そして…いつものように、腹の底から響くようなエンジン音を震わせて、
巨大な要塞としか表現できない戦闘機と護衛戦闘機が上空を飛び、
若社長がパラシュート降下で出勤してくる。
今日も変わらず、そんないつもの友引町の風景が、くりかえされるのであった。
終わり。
終わりました。
ここまで読んでくださった方々ありがとうございました。
今回はVSシリーズのイラストから派生した近未来不確定話で、
今までの話の中でも、より自由度が高く、私自身結構楽しめて書けました。
いつかはVSシリーズは短編で、イラストでも、小説でもいいから、
また書いてみたいと思いました。
それではお時間ありましたら、感想お願い申し上げます。
今までの乱文失礼しました。