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妙な所で改行になる場合があります。
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―GAME・OVER―
それは静かな夜だった。
いつもならこのまま静かな朝を迎え、
人々はその静かな朝を満喫しながら怠惰的に目覚め、
それぞれの場所へ散っていくはずだった。
そしてここ、友引町の中心に存在する面堂家でも…
しかしその惰眠は突如ある悲鳴によって破られた。
それは悲劇の幕開けを知らせる合図。
単なる始まりの合図だった。
黒メガネA「あ〜眠いな…」
黒メガネB「そうですね…午前2時過ぎ…
一番眠い時間帯ですからね。」
黒メガネA「草木も眠る丑三つ時ともいうぞ…」
黒メガネB「怖い事言わないで下さいよ」
黒メガネA内ポケットからタバコを出して火をつける。
そして自分のタバコをいるか?と目線で合図する。
黒メガネB申し出を快く応じる。
薄暗い廊下真ん中、
2つの小さなタバコの火と紫煙が立ち昇る。
ここは面堂家時期当主面堂終太郎の個人の家。
今この二人は終太郎の寝室の前で護衛の任務の最中だった。
黒メガネA「お前そういうものを信じるほうか?」
黒メガネB「家は信心深いほうでしたので…」
黒メガネA「このご時世に珍しいヤツだな。」
黒メガネB「そうですか?
科学で説明つかないようなものっていくらでもあるでしょう?」
静かな会話の中、どこからかの隙間風にのって
まとわりついていたタバコの紫煙が黒メガネから静かに離れていく。
くすりと少し笑う黒メガネA。
黒メガネA「まぁ中には本物もあるかも知れんが、
進みすぎたテクノロジーは
ファンタジーにしか見えないようなものもあるものさ」
黒メガネB「そんなものですかね…」
黒メガネA「何も全てを否定するつもりはないよ。
科学の発展においてわからない事は
わからないとはっきり認めることは大切なことでもある。
わからないから知ろうとしない、
それが無かったことにするというのは間違いだと言うことさ。
こんな言葉を残した作家がいる。(※1)
人はあらゆる幽霊の複合体だと…
つまり過去の全ての生命を複合して
出来上がっているのが今現在の人の形。
科学も科学だけでなく過去のあらゆる学問が
あわせられて出来上がっているのが
今のハイテクノロジーの姿…」
黒メガネB「哲学的ですね」
黒メガネA「そんなに難しく考えなくてもいいと思うよ…」
そんな静かな時間の中、突如部屋から悲鳴が聞こえた。
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「うわあああぁぁぁぁ!!」
黒メガネA,B。驚いて顔を見合わせる。
黒メガネA,B「若!!」
部屋の重いドアを開ける。
白を基調にした部屋の間取りには
あちこちに観葉植物が置かれている部屋。
電気をつける必要は無い。
若は寝るときも部屋全部の電気を、
最低でも枕もとの電気をつけっぱなしで眠っているから。
ベットは部屋中央付近に置かれている。
出入り口から中央付近までかなりの距離があるが、
とりあえず黒メガネ二人は
全力疾走でベットのところまでたどり着いた。
黒メガネA「若〜!!」
黒メガネB「どうなされました?」
二人が見ると終太郎はシーツを握り締め、
苦しそうにうめいている。
黒メガネA「しっかりなさって下さい!」
黒メガネB「何があったんですか?」
揺さぶっていると
ようやく終太郎は完全に目が覚めたようだった。
面堂「…恐ろしい夢を見た…例えようも無く恐ろしい夢…」
黒メガネA、B顔を見合わせる。
黒メガネA「怖い夢って了子様にいじめられる夢ですか?」
面堂「…違う…もっと怖い夢…」
黒メガネB「…夢は自分の心を映す鏡とも言いますよ。
でもいずれ悪夢は消えていくものなんです。
悪夢はバクに食べられると言いますから。
迷信かもしれませんがね。」
一瞬、終太郎はかつて無邪鬼が作り出した永遠の夏を思い出した。
サクラに協力したが、後から思い出すと
自分は本当にあの世界から脱出したかったのか…
今となってはもうわからない。
戻りたくても戻れない永遠の夏…
でも心の中であの夢とは種類が違うと思い直す。
面堂「心を映す…あれがか?…」
黒メガネA「どういった夢を見られたのです?」
面堂「言いたくない。思い出したくも無い。」
かなり不機嫌だ。
黒メガネB「…ではとりあえずもう一度お眠りになってはいかがです?
夜が明けるまではまだ時間がございますし…」
面堂「今何時だ?」
黒メガネA「午前2時過ぎです。」
面堂「わかった…お前たちはもう下がれ。」
黒メガネA「大丈夫ですか?」
面堂「心配ない。もう大丈夫だ。」
黒メガネB「部屋の外にいますから…
何かあれば直ぐお呼びください。」
黒メガネA「失礼致します」
護衛の二人が出て行った後、枕を床に投げつける終太郎。
面堂「あんな夢を見るなんて…あんな夢…あんな夢…」
余りにもおぞましく余りにも腹がたつ夢だったので
終太郎は、
ほとんど眠れずに朝を迎えてしまった。
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夜が明けて面堂家敷地内にも活気があふれ出す。
夜勤明けの者達や出勤してくる者達に
朝ごはんを作るため厨房では料理人たちが動き出し、
各セクションに新聞を配達する者が
各部屋を回り、業務用の大型クリーニングが回り始め、
ゴミ回収車が走り回り、
飛行場では登校用飛行機のエンジンを温めて
チェックを始める整備員達や
その他色々…。
そんな中、終太郎は不機嫌なまま起きてきて、
タコとの散歩、朝ごはんの時間、
友引高校へ
パラシュート落下登校をするまで黒メガネの機嫌を
直してもらおうとする
さりげない努力にもかかわらず、ほとんど黙ったままだった。
そして学校に来てからもなんとなく元気がなく
授業がいくつか終わり
女子生徒との会話に対しては笑顔を見せるものの、
必要以上にしゃべらない、
そんな面堂にクラスメート達の不信感が広まった。
教室の後ろに、こそこそ集まるいつものメンバー達。
カクガリ「今日の面堂なんかおかしくないか?」
メガネ「俺もそう思う。
あの面堂が女の子との会話をおざなりにするなんて」
チビ「朝からなんか不機嫌そうだし、何があったんだろ?」
パーマ「聞いてみたいけど俺らが聞いても言わねぇもんなぁ」
カクガリ「ヘタにつついて本気で怒らせたら怖いもんなぁ」
あたる「面堂のことなんか別にどうでもいいじゃんか。
何深刻に話してるんだよ?」
パーマ「アホ」
カクガリ「間抜け」
チビ「お馬鹿」
メガネ「だからお前は毛が3本足りんのだ。」
あたる「何だよ、いったい?」
メガネ「面堂の不機嫌さの原因はお前にあるってことさ」
あたる「俺?なんで?」
パーマ「何故かは知らんがメガネの言うことは確かだ。
お前ほんとに気づいてなかったのか?
朝から時々お前をすっごく、にらんでたぞ。
お前ほんとに心当たり無いのかよ?」
あたる「昨日やったことといえば…
悪口言って、ノートに落書きして、
了子ちゃんと付き合いたいって言って、
細工した賭けに勝って面堂の特製3段重ね弁当食って、
後ろから木槌でぶったたいて…」
ため息をつくメガネ「はぁ、もういい。」
パーマ「お前って、ものすごい悪人だな。大悪人だ。」
チビ「時々面堂がかわいそうになってくるよ…」
カクガリ「ほんと」
メガネ「…しかし、それらは時々は、既にやっている事だ。
次の日まで怒りを持続させるような
特異な出来事ではない。」
パーマ「確かに。」
あたる「どうしてメガネがそこまで面堂を心配するんだよ?」
肩をすくめてヤレヤレというようなポーズを
大げさにするメガネ。
メガネ「…心配?アホ。
面堂が怒り狂っていざ行動を起こしたら、
お前だけでなくクラス全体が
いやおう無く巻き込まれる可能性があるからだ。
理由はわからんが何か起こったらお前のせいだ。」
メガネ興奮してきてあたるの首を絞める。
あたる「わかった。
わかったから、離せ、興奮するなメガネ!」
パーマ「ロープ、ロープ!」
カクガリ「カウント、ワン、ツー」
メガネやっとあたるの首から手を離す。
メガネ「事の重大さがやっとわかったか。」
あたる「しかし俺、そんなにも面堂を怒らせるようなこと
やった覚えは無いんだけどなぁ」
メガネ「まだ言うか?貴様は?」
チビ「とりあえず謝った方がいいんじゃないの?」
カクガリ「起こってしまう前の
予防策としてはそれが一番いいかもな」
あたる「理由もわからず一方的に謝るのはなぁ…」
パーマ「しのぶかラムさんに
間に立ってもらって理由を聞いてみるのはどうだ?
それなら面堂も教えるかもしれん。」
あたる「なるほど…。しのぶうううぅぅぅ〜!!」
ぶっ飛んでいってしのぶに抱きつくあたる。
しのぶ「いきなりなにすんのよ!!」
机で殴られて床にへたばるあたる。
ラム「いつもダーリンはいきなりすぎるっちゃ〜!!」
しのぶと話していたラムはすぐに電撃攻撃を加える。
しのぶとラム。
このコンビ意外と共同戦線を張れば
攻守ともにほぼパーフェクトなコンビとなる。
メガネ、パーマ、カクガリ、チビ、
すぐさま4人組が木槌であたるを殴りまくる。
メガネ「アホか〜貴様は!」
パーマ「どうして普通に頼めんのだ?」
カクガリ「面堂の怒りに油を注ぐ気か!」
チビ「何聞いてたんだよ?」
そんな騒ぎの中、一人で席に座っていた面堂がついに立ち上がる。
チビ(うわ〜大魔神来襲!)
カクガリ(釣鐘大乱舞か?
逃げきれるだろうか?
直撃だけは避けたいが…)
パーマ(面堂のあのすさまじいスピードの
刀を受け止められる技術を持っているのは
あたるだけだ。
でもあたるの側が一番安全かと言えばそうじゃない。
一番危険だ。)
メガネ(あたるのアホが〜寝た子をわざわざ起こしくさって)
そんなことを考えてビビっている4人組。
そしてあたる、ラムとしのぶを見据える終太郎。
面堂「パーマ…ちょっと話しがある。」
パーマ(あ〜犠牲者は俺か?
俺って不幸、でもなんで俺?)
呼ばれた理由がわからないまま面堂に近付くパーマ。
面堂「今度の授業、体育だったな。
僕は気分が悪いから保健室へいって休むから。」
パーマ「へっ?何で俺に言うの?」
面堂「お前、今回体育当番じゃなかったか?」
体育当番。
それは体育の道具を倉庫から
出してきたり、みんなの前に出て準備体操をする係である。
欠席者がいる場合には先生に報告する事も含まれている。
パーマ「そ〜言えばそうでした。
でも気分が悪いって珍しいな。」
面堂「眠くて、体がだるいんだ。」
パーマ「ふ〜ん。超健康優良児で真面目なお前が
授業を受けないってそこまで言うんだから、
ほんとに体の具合が悪いんだな。
大丈夫か?」
面堂「心配は無用だ。」
話しながら、あたるのほうを強い目つきでにらむと
教室を出て行ってしまった。
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パーマに近付く4人組、あたる、ラム、しのぶ。
しかしどうもラムだけが事情を察していない様子である。
メガネ「パーマ、面堂なんか言ってたか?」
ラム「みんな深刻そうな顔してどうしたっちゃ?」
やっぱり…という感じでラムに説明するしのぶ。
しのぶ「面堂君がね、機嫌が悪いって話」
カクガリ「しのぶ、気づいていたのか?」
しのぶ「まぁね…クラスのみんな、
ほとんどは気づいているんじゃない?
それで面堂君何か言ってた?」
パーマ「眠くて体がだるいんだとさ。」
メガネ「それじゃあ、あたるがどう関わっているかはまだ不明か…」
あたる「メガネ、お前の気のせいなんじゃないの?」
軽いあたるの物言いに眉間に縦じわをよせ、
メガネを少し持ち上げるメガネ。
パーマが反論する。
パーマ「いいや、俺は絶対お前に関係あると見たね。
教室から出るとき面堂お前に対して怒っていたからな。
怒りを内に溜め込んで、
あのままだといつ爆発するかわからんぞ。」
あたる「黒ひげ危機一髪ゲームみたいな奴だな」
あたるのセリフにラム以外の者は大爆笑。
しのぶでさえ申し訳なさそうに控えめだが笑っている。
ラム「ダーリン、黒ひげ危機一髪ゲームってなんだっちゃ?」
あたる「それはだな…
樽の中に海賊の人形が入っていて
オモチャの剣を樽に差し込んでいき、
ある一定の剣が突き刺さったら突然
海賊のひげだるま人形が樽から飛び出すという
非常〜に緊迫感をあおるゲームなのだ。」
みんなはあたるの説明でまた大爆笑。
しかし笑いまくっている一同の中でメガネが我に返る。
メガネ「アホ〜冗談言うとる場合か?
面堂の怒りが爆発したら被害は広範囲に及ぶのだぞ」
あたる「ラムのようにか?」
メガネ「馬鹿、何を言ってる。違いますよラムさん。」
ラム「何でウチのようにだっちゃ?」
あたる「おまえは俺が
ガールハントにいそしんでおると直ぐに怒って電撃を放つ。
それによって被害増大。
短気で世間知らずなところは面堂そっくりで、
もうしょうがないなぁ…とメガネがさっき言ってたぞ。」
メガネ「言ってない。そんなこと!!」
ラム「メガネさんほんとだっちゃ?」
ラムの疑いの目線を受けて
あらぬ疑いをかけられたメガネが思いっきり否定する。
メガネ「言ってません、絶対に!!」
あたる「そうかな〜(笑)」
メガネ「あたる〜!!」
メガネがまたキレかかる。
そんなメガネに対してパーマ、カクガリに合図を送る。
カクガリ後ろから気づかれないように近付き羽交い絞めにする。
メガネ「こら〜!!離さんか〜ブレイク、ブレイク!!!」
チビ「ワン!ツー!イェ〜イ!!!」
パーマ「プロレスやってる場合じゃねぇぞ。
それじゃ、あとはまかせた。」
あたる達に手を振るパーマ。
あたる「え?俺?何?」
一瞬理解できなかったのか不思議そうな顔で
自分を指差すあたる。
チビ「代返はうまくやっとくから。じゃ〜な〜。」
カクガリ「ラムちゃんもしのぶも早く準備しないと遅れちゃうよ」
しのぶ「あたしたち女の子は
今日の体育は自習扱いなの、じゃあがんばってね〜」
チビ「そっかぁいいな〜」
メガネ「ラムさん、
不肖メガネはラムさんに対して
絶対あんな悪口など言っていませんから、
言ったのは諸星ですからね〜」
カクガリに引きずられながらメガネの叫びが
最後まで教室に響いて男子生徒達は
グランドへ体育の授業の為に出て行った。
あたる「何だ、次の授業は体育か、
じゃあ〜とりあえず保健室行ってみるか」
しのぶ「そうね」
ぶううぅとすねた様に文句を言うラム。
ラム「短気で世間知らずってダーリンが言ったっちゃね?」
あたる「しつこいぞ!ラム!」
そんな会話をしながら3人は保健室へ向かった。
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一方保健室では終太郎はサクラ先生と二人っきりで話し合っていた。
普段の面堂なら諸星同様
何らかのアプローチをしてくるはずなのに、
そんなことが一切無くただ気分が悪いと訴える
面堂の様子にこれは本当にただ事ではないと感じるサクラ。
サクラ「ただ気分が悪いとそれだけではわからん。
具体的に話してみてはくれぬか?」
面堂「精神的なもので…とてつもない嫌な夢を見て
その後一睡も出来なかったので…」
サクラ「悪夢…?どんな?」
面堂「言いたくありません」
そう言って唇の端を噛む終太郎。
サクラ「私はカウンセラーじゃ、それでも言いたくないと?」
面堂「…もうあんな夢、続けて見るとは思わないので…」
さりげなくサクラからの目線を外して保健室の窓から外を見る終太郎。
そんな泳ぐ終太郎の目線を静かに見守るサクラ。
サクラ「鬼の霍乱とはまさにこの事よな…わかった。
無理に聞くことはすまい。
とりあえずこの薬を飲んで少し眠るといい。
[とらんきらいざぁ]じゃ」
終太郎は薬が入っている
どでかい重そうなガラスビンを
事も無げに片手で軽そうに持ち上げているサクラから
薬をもらい疲れたようにため息をつく。
サクラ「ベッドはそっちのを使うがよい」
サクラが指差す保健室に備えている簡易ベットに
終太郎は内心すっごく狭い小さなベッドだと思いながら
上着を脱いでもぐりこむ。
面堂「それじゃあ少し休ませて頂きます。」
サクラ「良い夢をな」
ベッドの周りの遮光(しゃこう)カーテンを引いて机に戻るサクラ。
しばらくたつと静かな寝息が聞こえ出す。
サクラ「う〜ん、たまに来る諸星あたるのように
仮病で来ているということではないようじゃな…」
「呼んだぁ?サクラさん?」
唐突にサクラの眼前に現れるあたる。
サクラ「誰がおぬしを呼ぶか!!
叔父上にように
唐突に現れる術を会得しおって!!」
「呼んだか?」
いきなりチェリー、同じようにサクラの眼前に、
こともあろうにアップで現れる。
サクラ「おのれらはああぁぁぁ〜!!」
怒りのサクラがハイキックを炸裂させた。
諸星あたる、チェリー両名ともに窓の外へ蹴られて
青空に白い筋が引かれてブルーインパルスになって飛ばされていく。
あたる「ぶるううううぅぅぅ
いんぱるすううううぅぅぅ!!!」
しかしそんなことはいつもの日常なので
しのぶやラムは動じない。
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しのぶ「サクラ先生、面堂君の様子を見に来たんですが…」
ラム「終太郎の見舞いに来たっちゃ」
サクラ「ハァハァ…今、そっちのベッドで眠っておるから…静かにな…ふぅ」
しのぶ「は〜い」
ラム「わかったっちゃ」
汗をかいているサクラに2人とも
小声で返事してそっと終太郎が眠っているベッドを見に行く。
しのぶ「きゃ〜面堂君の寝顔初めて見るわ」
ラム「意外とかわいい寝顔だっちゃ」
あたる「そ〜か〜?落書きしたくなるような寝顔だな、無防備すぎるぞ。」
ラム「お帰りダーリン」
側に来ていたサクラ。
コケて痙攣(けいれん)を起こしている。
しのぶ「あら?チェリーは?」
あたる「さっき別れた。いつもの広場に帰っているだろ」
しのぶ「そう」
サクラ「おのれらはいつも脈絡の無い出方をしおって大概にせい(怒)」
あたる「やだな〜サクラさん、そんなに嬉しそうにしなくても…」
サクラ「誰が嬉しいと言っておるか、怒っておるのじゃ」
そんな中で終太郎が苦しそうにうめきだす。
ラム「みんながうるさくするから終太郎が起きるっちゃ」
みんなベッドの周りに立って覗き込む。
サクラ(もしかして悪夢の再現か…?
いったいどんな悪夢を見ておるというのだ?)
終太郎うっすらと目を見開く。
最初は目の焦点が合っていなかったようだった。
面堂「ラムさん、しのぶさん、……諸星…あたる…」
あたるの姿を確認した瞬間
どこからか日本刀が現れ手にした終太郎が斬りかかってきた。
面堂「おのれはまたしても許可無く、
僕の夢に出てきおって、もう許せ〜ん!!!」
終太郎が巻き起こした剣風でラムやしのぶの髪が跳ね上がる。
あたるのほうはあわてて真剣白羽取りの奥儀を展開する。
あたる「俺が何をしたというのだ??」
面堂「やかましい、こっちはもう我慢の限界なんだ。
とりあえず貴様は消えて無くなれ!!」
刀に全体重を乗せてあたるを斬ろうとする終太郎。
あたるのほうは両手両足を使って必死で刀を持って防ごうとしている。
まるでその姿は亀がひっくり返ったようである。
サクラ「やめぬか!二人とも、面堂。おぬし悪夢と言っておったが
それは諸星が出てくる夢なのか?
それでは諸星には何の罪もないではないか、
夢を見ているおぬし自身の問題だろうに。」
サクラの言葉を聞いた終太郎、唇をかみ締める。
刀からは、ようやく力が抜け、あたるは立ち上がり安心する。
あたる「夢だと?じゃあ俺の責任じゃないわけだ。」
ラム「いったいどんな夢見てそんなにうなされるっちゃ?」
しのぶ「もしかして、あたるくんに負けちゃう夢?」
サクラ「もうここまできたら全部話したほうが楽になるかも知れぬぞ?」
終太郎、嫌そうにあたるの方を見ていたが
大きなため息をつくと決心したように話し出す。
面堂「……」
サクラ「なんじゃ?小声過ぎて聞こえんぞ?」
面堂「………」
あたる「ちゃんと言えよ。なんなんだ?」
面堂「…だから…お前が…僕に………プロポーズする夢…」
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……時間が止まったような感じになったのは気のせいだろうか?
体が硬直して動けない。
誰も今聞いたセリフに現実感が持てない。
すでにサクラは燃え尽きて灰と化している。
最初に動いたのはしのぶだった。
しのぶ「いやあああぁ〜!!面堂君フケツよ〜!!」
机を投げつけるしのぶ。
あたる「ふざけんな!!このぼけ!!
なんで俺がお前にプロポーズしなくちゃならんのだ!!」
木槌で殴りつけるあたる。
ラム「どうしてダーリンは
ウチじゃなくって終太郎にプロポーズするっちゃ〜!!」
ラムだけあたるに食って掛かっている。
机に埋もれながら
必死であたるの木槌攻撃をさけて弁明する終太郎。
面堂「僕だってわかりませんよ、
夢の中では必死に拒否しているのに迫ってくるのは
諸星の方なんです!!
昨日はシンデレラになって、さっきは戦士に付き添うヒロインで
僕はいつも諸星に無理やりキスされるんです!!」
終太郎はもう半泣き状態に陥っている。
しかしどこかで聞いたような話にしのぶ以外の三人が我に返る。
連続して机を投げようとしているしのぶを、
止めるあたる「しのぶ落ち着け。」
復活したサクラ「面堂、夢を見始める前に
何か変わった物を口にしなかったか?」
面堂「…変わった物って?」
しのぶ「何?どうしたの?」
ラム「たとえば小さくて…」
あたる「たとえば赤い色で…」
サクラ「たとえばテンにもらった物とか…」
面堂「…もらいました。
以前面堂家に伝わる正式な人への謝り方について
伝授したらそのお礼に
いい夢が見られるって赤い木の実みたいなものを…
やっと最近実が出来たからって…」
あたる「謝り方〜?どんなのだ。見せてみろよ?」
面堂「何で僕が…」
あたる「いいから見せろって。
夢を見る原因の根本がわかるかもしれんぞ」
それから一同はまたしても面堂家に
伝わる変わった風習の一端を見ることになる。
それは一体全体どこをどう見れば謝っている姿なのか、
まったくもって意味不明な謝り方だった。
おもいっきり胸をそらして腰に手を当て
えらそうにふんぞり返る終太郎。
そして終太郎の声が保健室に響き渡る。
「わ〜るかったな!!!」
ぶっ飛ぶ一同。
あたる「あほか〜!!
どう見てもケンカ売っとるようにしか見えんでは無いか?
ジャリテンが怒るのも無理ないわ!」
またしても木槌で殴るあたる。
面堂「ど〜して怒るんだよ?
これは代々面堂家に伝わる由緒正しい作法だぞ!!」
あたる「いい加減に面堂家の作法に固執するのやめろって。
これじゃあジャリテンが
嘘を教えられたと思って報復しようとするのはあたりまえじゃあ!」
しのぶ、わけが判らずラムに理由を聞く。
ラム「以前、夢の実といって
ウチの希望をプログラムした遺伝子操作した植物を
作って育てていたときがあって、
そのうちの一つをテンちゃんが勝手に持ち出して
サクラに飲ませたことがあるっちゃ。
そのときは内容を知らずに、
ただいい夢を見られるという事だけ教えていたから
まさかあんな内容だとはテンちゃんは知らなくって
サクラは結局夢の中で理想のダーリンと結婚式をあげたっちゃ」
しのぶ「結婚式〜?」
ラム「一粒3セット構成で
出会い編、交際編、結婚編…」
しのぶ「じゃあ、このままでいくと面堂君はあたるくんと最後の…」
ラム「結婚式をあげる羽目になるちゃ。」
頭を抱えるあたると面堂。
あたる「いやじゃあああぁ!!!!」
面堂「僕だっていやだあああぁ!!!!
とりあえず夢を見るのは直接的には僕の責任じゃない。
夢の実とやらのせいだ。
そういうことで、とりあえず死ね、諸星!!」
またしても二人のケンカが始まる。
しのぶ「どうしてそんな危険物を置いてたの?」
ラム「あれはとっくに枯れてもう終わったっちゃ。
でも種が出来ていて厳重に
保管しておいてたはずなのに…
テンちゃんが持ち出して成長させたっちゃね」
あたると面堂、木槌と日本刀で応戦しながら会話に加わる。
実に器用である。
あたる「…とすると、すべて悪いのはジャリテンだ」
面堂「せっかく謝り方を教えたのに!」
あたる「なら結局悪いのはお前じゃ!」
面堂「何を言うか?
ジャリテンが謝らなければならない事になったのは、
お前のせいだと聞いたぞ。
事の発端はラムさんが丹精込めて編み上げた手編みのマフラーを
お前がジャリテンからの攻撃を避けれずに食らってしまい
燃やされた事からだと。
そしてラムさんに燃やされたマフラーに対して
ジャリテンを怒らなければならないと、
子供のしつけは思いっきりやらんといかんと
必要以上に怒りを焚き付けたのだと。
結局めぐりめぐってお前のせいだ!!
何で本体のお前は余裕で燃え残るんだ?理不尽だ!
世界平和のためにマフラーといっしょに
燃えてりゃ良かったのに!!!」
あたる「俺の人体耐熱仕様が
もらったばっかりの
マフラーにまだ馴染んでなかったんだよ!!!」
面堂「お前は何時から人外の存在に変貌したんだ?このおバカ!!!」
きりが無くなってくる二人のケンカを止めるサクラ。
サクラ「落ち着け二人とも、ケンカをやめい。」
サクラの命令で一応二人とも手を引く。
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サクラ「ここでいつまでもケンカをしていても解決にはならんぞ。ラム!」
ラム「とりあえずテンちゃんを見つけて育てた夢の実を回収しなくっちゃ」
しのぶ「見つけるっていったいどうやって?
今の時間いろんな場所に行ってると思うけど?」
皆がジャリテンの遊び場所を思い描く…
空の上でスクーターでの暴走、チェリーとコタツネコのいる広場、
トラジマ(辺り一帯のボスネコで、
かつてあたると屋根の上で決闘を
やらかした)の所、もしくはUFOかあたるの家…
エトセトラ、エトセトラ…
面堂「あの手がある」
あたる「そうだな、あの手だな。」
サクラ「もしかしてあの手か?」
ラム「あの手あの手って何を三人納得しあってるっちゃ?」
しのぶ「何か良い手があるの?」
あたる「ジャリテン捕獲計画を実行する。ラム、そこの窓を開けろ。
サクラさんはその前に立って。面堂はザルと棒とヒモを用意しろ。」
サクラの前に置かれた物はスズメ取りに使うような罠であった。
セットされたザルと棒を指差して、しのぶが疑問を口にする。
しのぶ「何でこんな物でテンちゃんが…」
ラム「いくらなんでもそんな罠に引っかかるわけないっちゃ」
あたる「モノは試しだ。」
懐疑的なしのぶとラム。
こんな罠に今時引っかかるはずは無いと内心思っていた。
しかし窓の外から聞こえてくる声。
「わ〜い、サクラ姉ちゃんや〜」
しのぶ「うそ?」
ラム「信じられんちゃ?」
見事に罠に引っかかるオムツ。
これで地球より進んだ科学力を持つ宇宙人なのだから、あきれたものである。
あたる「わ〜い釣れた釣れた♪」
手をたたいて喜ぶあたる。
面堂「…フッ、まぁこんなものですよ…」
物憂げに前髪をかっこつけてかき上げる面堂。
サクラ「やれやれ…」
肩をすくめるサクラ。
ジャリテン、あたるを前にしていつもの関西弁でしゃべりまくる。
ジャリテン「おう、アホ、ようもワイを罠にはめよったな、覚悟さらせよ。
今すぐ黒こげにしたるさかい!!」
あたる「なんだとこのガキ、同じ手に2度も引っかかりおってからに」
そうジャリテンは以前こんな簡単な罠に引っかかったことがあったのだ。
それは風邪をひいた
ラムのマスクからあたる達もが風邪をひいた事件が発端であった。
…大宇宙の神秘。
宇宙人の風邪は地球人達に思わぬ作用をもたらした。
ラムがふれた部分が蛍光緑と蛍光ピンクの縞模様(しまもよう)に
なってしまうというおぞましい病気にかかるという作用…
間接キッスを企んだ者は羞恥極まりない状態に陥り、
治す為にはラムの風邪の薬(宇宙人用)を手に入れる為
UFOに出入り自由なジャリテンを捕獲して説得するしかないと
あたるが使用した罠だった。
そして今あたるには、対ジャリテンモードの武器の
フライパンがいつの間にか
手に握られている。
細かい事にテフロン加工仕様である。
ジャリテン「やるかこのボケ!!」
あたる「望むところだ。返り討ちにしてやる。」
サクラ「い〜かげんにせんか!今はそんなことをしとる時ではなかろう」
ラム「テンちゃん、ウチの夢の実育てたっちゃね?」
ギクリとその一言でビビるモードになるテン。
ジャリテン「ラムちゃん…あの…その…」
サクラが優しくテンに呼びかける。
サクラ「テン…今どうして自分が夢の実の事で呼び出されておるか、
わかっておるか?」
次いで面堂が話す。
面堂「一体どうして僕にそんなものを飲ませたんだ?
せっかく謝り方を教えたのに?」
やれやれというポーズで鼻で笑うあたる。
あたる「どのへんが謝ってるんだ?
今すぐこの俺に説明してみろよ、お前。」
しのぶ「だまってなさいよ」あたるの口をふさぐ。
ジャリテン「お前、嘘教えたやんか?
教えられた直後は感謝しとったけど
あのあと教えられたとおりにうまくいくか、
予行練習して試してみたらひどい目におおたんやで。」
サクラ「予行練習?」
ジャリテン「そや、あたるのクラスの4人組に戦闘しかけて
その後うまくいくか謝ってみたんや。そしたら怒られてえらい目におうたんや」
その時を思い出すテン。
スクーターに乗って悩む中ふと下を見ると外出して映画へ行こうとしていた
メガネ達を見つけた。
ジャリテン「ラムちゃんに謝る前にさっき教わった謝り方を試してみよかな…」
西部劇よろしくメガネ達の前に立ちふさがるテン。
メガネ「どうしたジャリテン?」
完全に油断している4人組。
そして…ジャリテンのマシンガンで爆弾で情け容赦ない攻撃が始まった。
「うぎゃあああぁぁ」逃げ惑う4人組。
ジャリテン(…このくらいでええやろか…)
しばらくしてスクーターから降りるジャリテン。
半死半生状態のメガネ達。
ジャリテン「待ってえぇな、今、あやまるさかい。」
メガネ達の前にゆっくり歩いていく…そして問題のセリフを炸裂させた。
ジャリテン
「わああああああぁぁぁぁぁ〜るかった
なあああああああああぁぁぁぁ!!!」
………その直後4人の地球人たちは無言で
トラ柄オムツの宇宙人をタコ殴りにして去っていった………。
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ため息をつくサクラ。
サクラ「それは違うぞテン、
わざと人を怒らせてその後、謝ったとしても本当に謝ったとは
人は見てくれん。
人を試すというのは時と場合によっていけないことになるのじゃ。
ましてや面堂は嘘はついてはおらん。
まぁ…ちょっと特殊な謝り方ではあったがの…」
しのぶ「じゃあこれからどうしたらいいの?
面堂君、今度眠るとあたる君と結婚式を…」
面堂「それを言わないで下さい…」
手で顔をおおい、ぐったりと疲れたようにベッドに座る終太郎。
あたる「ジャリテン、とりあえず夢の実を全部出せ、没収じゃ。」
サクラにおひざ抱っこをされていたジャリテン、
素直にあたるの手の平に夢の実を置く。
あたる「全部で3つか…」
ラム「ダーリン、またやるっちゃ?」
サクラおもいっきり嫌そうに眉をよせる。
しのぶと終太郎は不思議そうにあたるを見ている。
あたる「やるしかないだろう…今回は俺も真剣に妨害する。
前回より人数も一人多い。
サクラさんか、しのぶ。協力してくれ」
サクラ「わしは今回パスさせてもらう」
しのぶ「どうするの?」
ラム「終太郎の夢の中に入って内側から壊すっちゃ」
あたる「そうと決まれば急ぐぞ。」
どこからか催眠ガススプレーを取り出し自分たちに吹きかける。
サクラはあわてて保健室の外へテンを連れて避難して
戻ってきたときにはラム、あたる、
しのぶ、面堂はすっかり夢の中であった。
サクラ「やれやれ行ったか…
テン、みんなが戻ってきたらとりあえず面堂には謝るのじゃぞ。
悪意があって教えたわけではないのだからな」
ジャリテン「わかった、サクラね〜ちゃん」
サクラ(はてさて無事に戻ってくるじゃろうか…
面堂もとんだ災難に見舞われたものじゃ)
窓の外を見ると校庭には木漏れ日に葉の生い茂った木々が見え
体育の授業で時々湧き上がる歓声などで
平和すぎて日向ぼっこでもしたいような、穏やかな光景が広がっている。
サクラ「…皆が戻ってくるまで茶菓子でも食べて待つとしようかのぅ、テン。」
テンに茶菓子の用意をさせ、自分は湯飲みにゆっくりと茶を注いだ。
サクラ(…やれやれ…本当に、どうなる事やら…)
夢の中、果てしない世界が現実以上に数多く広がる世界。
その世界でラム、あたる、しのぶ、終太郎VSラムの理想の
あたるとの
不条理な戦いが始まった。
理想のあたる「結婚しよう、面堂!」
面堂「真顔で言うな!離せ!馬鹿者!」
あたる「わぁああ俺、気色悪いことするな!」
ラム「どうして現実世界でウチに言ってくれないちゃ〜!!」
しのぶ「あたるくん!いくらガールハントしても失敗するからといって
ボーイハントすることないでしょおぉ〜!!」
あたる「しのぶ!正気にもどれ!無差別に机を投げるな。
投げるんならあっちの俺にしろぉぉ!!」
……机が散乱し、折れた木槌や、
日本刀がいくつも地面に突き刺さっている。
電撃の出しすぎで疲れた表情のラム。
放心状態のしのぶ。
黒焦げになったあたるはピクリとも動かない。
……そんなこんなで結局あたるたちは
ラムの理想のダーリンに負けてしまい
抵抗むなしく面堂は連れ去られ
最後
結婚式場に乱入したときにはもう手遅れな状態であった…。
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―教会にて―
ステンドグラスの窓からは光が差し込み、荘厳な音楽が流れている。
夢の中のチェリー。
キリスト教の司祭みたいな格好をしている。
十字架の前に立つ白いタキシートを着た理想のあたる。
同じく白系ピンクパールホワイトのウェディングドレスを着た終太郎。
窓から差し込む光でドレスがキラキラ光って、これがまた似合っている。
美しく悲しいほどに。
面堂「馬鹿者離せ〜!!嫌だあああぁぁ!!」
もう半狂乱である。
面堂は決して腕力は弱い方ではない。
むしろ腕力だけを比較するとクラスで一番強いのである。
多数の釣鐘を持ち上げて投げつける腕力。
そのパワーを持つ面堂が普段無意識にセーブしているパワーを
セーブ無しのフルパワーでおもいっきり抵抗してもラムの
理想のダーリンには勝てないのである。
夢の中のチェリー「では誓いの接吻を…」
面堂「やめろ〜!!僕は嫌だあああぁ!!!」
必死に顔を背けて抵抗する終太郎。
しかし理想のあたるは、しっかりと面堂を抱き込んで
顔をのぞきこんで唇をタコのように伸ばしてくる。
理想のあたる「好きだ。面堂。ぶちゅ!」
面堂「♯♭$℃@%&!!!!!………………」
終太郎はもう気絶寸前である。
そこへ立ち直ったあたるたちが教室へ乱入してきた。
しかし目に飛び込んできた光景は
理想のあたると終太郎の濃厚キスシーンだった…。
ラム「間に合わなかったっちゃ」
しのぶ「面堂君…お気の毒に…」
あたる「わぁああぁ!!かわいそうな俺!!」
面堂「かわいそうな俺…かわいそうな俺…かわいそうな…かわいそうなのは
僕の方だあああああああぁぁぁ!!!!!!!」
無差別に釣鐘を投げつけてくる終太郎。
ラム「やめるっちゃ終太郎」
しのぶ「面堂君、気持ちはわかるけど、しっかりして」
もはやラムやしのぶの説得や、なだめもまったく効かない。
あたる「も〜世話の焼ける」背後に回ったあたる。
そして次の瞬間教会中に広がる音。
一瞬目をつぶったラムたちが再び目を開けたとき、
そこにはVサインをしたv (^^*)理想のあたると
ガッツポーズをして木槌を持っているあたると
完全にのびている終太郎がいたのであった。
保健室にて目が覚めるあたるたち。
終太郎は夢の中で気絶したためか一番最後に気がついた。
頭をさすりながら目を開ける。
サクラ「…どうであった?」
打ち震えながらこぶしを握りしめるあたる。
あたる「われわれは命ある限り戦い、聖戦として位置づけ
一人として逃げ出す者も無く
古今東西誠心誠意尽くしましたが…」
サクラ「だめだったのじゃな…」
あたる「…残念ながら…」
ガックリと頭(こうべ)を垂れる(たれる)あたる。
サクラ「面堂、みなが一生懸命やってもだめだったのじゃ、
しかしその努力に対しては
感謝するべきじゃろうな」
面堂「そうですね…ラムさん、しのぶさんありがとうございました。」
あたる「俺に礼は言わんのか?」
嫌そうにではあるが一応礼を言う面堂「…thank you…」
サクラ「さて、もう少しで授業も終わるな。
面堂の方も、もう悪夢を見ることは無い。良かったの。」
そのときジャリテンがサクラに合図を送る。
サクラ「おぉそうじゃった。テンが面堂に謝りたいそうじゃ。
テンも反省したようじゃから…。」
面堂「…別に気にしなくていい…」
ベッドの上においてあった自分の上着を着ながら
ぶっきらぼうに返事をする面堂。
ジャリテン「そういう訳にはいかんねん。これもケジメやねん。」
あたる「ガキのくせに律儀なやっちゃ」
しのぶ「えらいわ、テンちゃん」
ラム「見直したっちゃ」
面堂「…わかったよ…」
ジャリテン「じゃあ、謝るからな、よ〜見とけよ」
一同テンを見る。
この時点で一同は地球の
一般的な頭を下げる普通の謝り方で謝るものと思い込んでいた。
大声で叫ぶジャリテン
「わあああああぁぁぁ〜るかったあああ
なぁ〜ああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
胸をおもいっきりそらして、超えらそ〜な態度。
『……ぶちっ!!』
次の瞬間、保健室にいた者全員は面堂の理性がぶちきれる音を聞いた。
それは黒ひげ海賊危機一髪ゲームの終了を意味する音だった。
外にいたメガネたちの目撃によると、
あたるとジャリテンの絶叫が保健室に響き窓ガラスが割れ、
同時に窓枠や、壁を突き破って飛び出したいくつかの巨大な釣鐘が
体育の授業で外にいた2年4組の男子生徒をおもいっきり押しつぶし、
サクラの制止する声や
しのぶやラムの悲鳴がして保健室は爆発して…崩壊した。
メガネ「…まぁ強いてこのむなしい戦いから
教訓を得るとすれば、
仏ほっとけ、神かまうな」
チェリー「…とりあえず、合掌…」m(_ _)m
おわり
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(※1)
「人はあらゆる幽霊の複合体」少しセリフを変えて
描いています。
本当は「あらゆる透明な幽霊の複合体」宮澤賢治「春と修羅」序の
中の一節です。
こんな感じ↓
わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
結構有名な一節だと思います。
(´・∀・`*)v<小説やっと終わった。長引いてゴメンなさいです。